嵐BL妄想(お山OS)
登場人物等全てフィクションです
side 翔
何となく観てたテレビに、智の顔が映って固まった。
「智? え? どうして?」
芸能ニュースだった。
元ホストと女優の交際の噂。
有名女優の顔は、見覚えがあった。
ホストクラブの常連だったはず。
「お客だった……よね?」
女優がインタビューに答えている。
「ええ、交際しています」
「彼のスポンサーでもありますよね?」
「いいえ、それは違います。彼、これからの人ですが優秀な人ですから」
綺麗な女優さんだけど、智とは親子くらいの年齢だ。
交際って、恋人?
「彼、今度は個展を開くんです。ぜひ、みなさんいらしてね」
智は、新人画家で、イラストレーターにもなっていた。
女優との噂は、彼の名前を大きく宣伝することになって。
個展は、凄い人数がきているらしい。
個展に行く勇気は、無かった。
俺はただ、雑誌やテレビへ映るようになった智を、眺めているだけ。
「良かったんだよな……」
気が付けば、智のデザインだと言う広告が、見られるようになった。
応援になるのか、分からないけど、智の関係の商品を買ってみたりもした。
現実とは思えない。
智、絵なんか描いていたっけ?
俺の知らない時間の長さを痛感した。
そう言えば何でも器用だった。
字も綺麗だったし。
勉強だって、教えるようになったら、すぐ成績はUPしていった。
でも、正直驚きながらも、嬉しかった。
陰で隠れていた少年。
いつも、ひとりぼっちだった彼が、こんなに明るい場所で。
たくさんの人の賛辞を受けている。
「智、良かったね」
もう、2度と会えないけど。
それでも、元気な姿が見られるなんて、嬉しい。
やはり、別れて良かったんだ。
あのままだったら、まだ、マンションでぼんやりしていたかも知れない。
幸せになって欲しい。
思うのは、それだけだった。
――――――
智が描いたらしい広告やポスターを見ながら、遠回りして帰るのが日常になった。
もうすっかり売れっ子デザイナーの彼。
元ホストも、この世界ではプラスにしかならないようだった。
「また、増えてるなあ」
繁華街のデジタル広告は、智の名前が入っている。
綺麗な彼は、自身が広告に出ることもあった。
智の写真の前で立ち止まる。
日焼けして、男っぽい彼は、素肌に白っぽい色のジャケット。
その辺の俳優よりもカッコいい。
こうなると、俺とのことは黒歴史でしかない気がする。
大切な人生1度きりの恋。
墓場まで、思い出を持っていかなくちゃと思って、帰宅を急いだ。
大切な思い出は、もう誰にも話さない。
自宅であるマンションの前。
見慣れない車が止まっていた。
不審に思いながら、マンションに入ろうとすると。
「先生!」
「……?」
声がするけど、誰のこと?
自分とは思えないから、無視して行こうとした。
「翔先生!」
「えっ?」
振り返ると、そこには智が立ってる。
「智? え?」
車から降りたらしい智。
手には、大きな花束。
微笑んだ彼が、楽しそうな声で言った。
「先生、結婚して!」
そう言って抱きしめられた。
続く
や、やっとここまできた・・・
お待たせしました