嵐BL妄想(お山OS)

登場人物等全てフィクションです

 

 

 

 

 

 

 

side 智

 

 

「夢は叶いましたか?」

 

手紙の言葉が、胸に迫る。

 

俺の夢。

それは翔だった。

 

孤独で小さな世界にいる俺を幸せにしてくれた。

でも、今は……。

 

今は、静かに暮らすのが精一杯で。

恋人なんて遠い。

どこからやり直すべきかも、もう分からなかった。

 

 

 

「ねえ、その字じゃない? あの男の子」

 

「……わかんない。字とか書いてるの見た事なかったから」

 

俺の返事に、相葉君はがっかりしたようだった。

 

「そうかあ、俺の勘違いかなあ。こんな短い手紙。めずらしいから、てっきり……」

 

「相葉君、ありがとう。でもさ、まだ分からないんじゃない? 智も見た事ないだけでさ、違うって決まってないじゃない?」

 

「……」

 

優しい翔は、なんとか希望を繋ごうとする。

それは、まるで……もう無理だと知っているよう。

 

「……ねえ、翔はさ、何か知ってるの? 俺の知らないことあるの?」

 

「え?」

 

嘘がつけない翔。

綺麗な大きな目が泳いでるよ?

 

「……言ってみて。俺は大丈夫だから」

 

「……知ってるわけじゃない。ただ……」

 

「ただ?」

 

 

 

 

翔は、困った顔で、細い声で言う。

 

『あの、カズヤ君が刺された時。……もし死んでも智には言うな。生きてることにしてくれって。そう言われたんだ』

 

ああ、そうだと思った。

きっと、俺は分かってた。

カズヤなら、きっと言う。

甘えた俺が、生きていけない、そう思ったんだろう。

なのに、聞いた途端に力が抜けて、しゃがみ込んでしまった。

 

「智!」

 

「だ、大丈夫?」

 

二人が、慌てて俺を支えてくれる。

 

「大丈夫……大丈夫じゃないのは、翔だろ?」

 

翔は、もう泣いてる。

きっと今まで、黙っていたから辛かったんだ。

俺は、翔をそっと抱きしめた。

 

「……ごめん。今まで、翔に甘えてた」

 

「ごめん……でも、死んだって決まってないし」

 

でも、そう思ってるから、泣くんだろ?

どんな風に刺されたのか、どんな傷なのか、俺は見ていない。

翔は、その場にいたんだから。

それも、翔を庇って。

翔の心の負担は、大きかったはずだった。

 

「ねえ、何があったの? あの子、死んじゃったの?」

 

相葉君まで、泣きそうになってる。

 

「……死んでない。諦めないでいよう? ね?」

 

涙をこぼしながら、翔が言う。

 

「……ああ、そうだね」

 

我ながら、棒のような感情のない返事をする。

 

 

死んだわけじゃない。

でも、決して無事だったわけじゃない。

 

あの男に、俺が守るって言ったばかりだったのに。

死にそうな少年にまで、心配かけてる俺って最低じゃないか。

 

こんな俺じゃ、夢を追いかけられない。

そう思った。

 

……手紙は、相葉君へ返した。

 

 

『夢は叶いましたか?』

 

 

俺の夢は、もう無いよ。

 

ごめん、カズヤ。

ごめん、翔。

翔が、愛してるって言ってくれて嬉しかった。

 

どこで、どう間違っちゃったんだろう。

ただ、恋をしただけだったのに。

欲しいのは、ただ一つの恋だけだったのに。

 

ただ、……家族が欲しかっただけなのに。

 

もう、翔やみんなに甘えるのは、やめよう。

そう……決めたんだ。

 

 

続く