嵐BL妄想(お山OS)

登場人物等全てフィクションです

 

 

 

 

side 相葉

 

 

その日の学校は、創立記念日の休みで、生徒は殆どいなかった。

夕方近く、校庭を通ったら、見慣れない男の子がいた。

高校生くらいに見えるのに、オーラは普通の子には見えない。

少し離れた場所に立つ別の男は、こちらを睨むように見つめていた。

その男の近くに止まった黒い高級車といい、明らかにヤバい感じ。

 

(おわ、何? ヤバそう)

 

目を合わせないように、通り過ぎかけると男の子が話しかけて来たんだ。

 

「ねえ、ここの先生?」

 

「え? そうだけど?」

 

男の子は、無愛想な顔を少し傾けた。

 

「翔と智を知ってる?」

 

「智? 翔ってあの先生かな?」

 

ぱあって明るくなった表情で、やっぱり子供かもって思う可愛い笑顔になった。

 

「ちょっと教えてくれない?」

 

急に俺に向かって駆けてくる。

慌てた男性が追いかけて、その子の手を掴んで引き止めた。

 

「離せよ!」

 

「勝手に動くな。見るだけって約束だろう?」

 

華奢な男の子は、体躯のいい男の手を、振りきれずにもがいていた。

 

「あ、あの?」

 

「話だけ、ちょっとだけ」

 

「…………」

 

男が手を離して、男の子はそっと俺のそばに立った。

 

「先生たちの知り合い?」

 

「そう。昔の話が聞きたい」

 

「昔?」

 

「二人が恋人の頃の」

 

「ああ……」

 

 

 

 

 

「でも、別れちゃったんだけどなあ。今、どうしてるの?」

 

「う〜ん。よく分かんない。会ってるけど喋んないんだ」

 

「へ? どう言う意味?」

 

うふふなんて、楽しそうに笑うと、子供っぽくて可愛いかった。

 

 

 

その時、ザアって風が吹いて。

少し離れてる場所のまだ若い記念樹が揺れる。

 

「あの木のそばにあるのは何?」

 

記念樹のそばには、記念碑とポストがある。

 

「あれはねえ、記念の未来へのポスト。生徒が書いて入れるの。未来の自分へとか、会えない人へとか。片思いの相手へとかさ」

 

そう。卒業時期はいっぱい入ってるんだけど、それ以外は、ほぼ空っぽ。

 

「なんで、入れんの? 直接言えばいいのに。それかどっか見えるとこに書けばいいのに」

 

「はは。まあねえ、繊細なんだよ。特に片想いとか、未来へとかさ。ここに入れる事で完結してる感じ」

 

「ふーん」

 

分からないと言った感じの男の子。

その後、5分くらいだけおしゃべりした。

その間中、さっきの男に睨まれながら。(男前だけど、超怖そう)

 

智と翔先生の思い出。

俺が知ってる内容は、5分で終わってしまう。

でも、二人は純粋に愛し合ってたんだ。

それだけは知ってるから、そう言った。

 

「また、やり直せばいいのに。あの二人、せっかく会っても話さないからな」

 

「どういう状況? 会ってんの?」

 

「説明できない、難しい。俺じゃ、よく分かんないもん」

 

恋愛なんて、一生しないからって、男の子は笑う。

ええ? それってどう言う意味?

俺はわかんない事ばかりだった。

 

「俺じや、無理みたい。アンタ、友達なら何とかしてよ」

 

「ええ? もう何年も会ってないよ? 連絡先も知らないし」

 

「それなら……」

 

男の子は、スマホを出すと俺へ智の番号を送ってくれた。

気が付くと、ジッと男の子がポストを見つめてる。

 

「なあに? ポストへ入れてみる?」

 

「何書くの? 俺、一生夢なんか無いよ?」

 

「どうして? なんでも良いよ。思ったこと書けばいいし」

 

「……ないなあ」

 

その時、さっきの男が痺れを切らしたように、男の子を迎えに来た。

 

「帰るぞ」

 

「……うん」

 

ため息を吐くと、男の子は俺に向かって儚く笑った。

 

「あ。名前は? 俺、相葉って言うんだ」

 

「俺の名前は、もうすぐいなくなるから、意味ないよ。じゃあね、相葉さん」

 

「ええ? 待って」

 

「さよなら」

 

男に、抱えられるようにして、男の子は去ってしまった。

会ったのは、その1度きり。

 

……いなくなる?

 

その意味は分からなかった。

 

 

 

まるで、夢の中のような一瞬の出会いと別れは、ずっと心に残ったんだ。

 

風の音と記念樹の揺れる枝。

 

ポストがカタカタと鳴った。

 

綺麗な少年と美しい男は、ドラマのようだったから。

 

分かるのは、翔先生と智を思ってる子だってだけだった。