嵐BL妄想(お山OS)の番外編・智くんのお母さんのお話です。

登場人物等全てフィクションです

 

 

 

 

 

番外編「里子の恋」

 

 

 

 

初恋の人が言った。

 

「里子、結婚したい」

 

嬉しくて、すぐにOKした。

 

でも、彼が言ったのは、体だけの結婚だった。

 

「いつ結婚するの?」

 

「16で結婚なんて、出来ないよ」

 

ショックだった。

 

 

 

別れてすぐ、妊娠してる事に気がついた。

 

親に言ったら、お母さんは半狂乱だし。

 

怒ったお父さんには、家を追い出されそうになった。

 

私はまだ、16歳だったから。

 

 

 

堕胎しろって言われたけど、自分の赤ちゃんを殺すのは嫌だ。

 

産みたいって言ったら、産んだ後、養子に出せって言われた。

 

ひとりじゃ、とても産めない。

 

とりあえず頷いて。

 

家から遠い、他県で入院して産んだ。

 

生まれたのは、男の子だった。

 

可愛くて、初めて顔を見て、すぐ思った。

 

「家を出よう」

 

このままじゃ、子供は養子に出されてしまう。

 

大反対されたけど、家を出た。

 

子供の頃からの貯金と、お母さんが内緒で、少しのお金と住む場所を用意してくれた。

 

お父さんに見つからないように、知らない土地だった。

 

しばらくは、お母さんが通ってくれて、なんとか手伝ってもらった子育て。

 

でも、お母さんが倒れてしまった。

 

きっと、私のせいだ。

 

お母さんには、無理しないようにお願いして、一人で育てる事にした。

 

でも、何もかも大変だった。

 

保育所は高いし。

 

私は、未成年では雇ってくれるところが、少なかった。

 

「可愛いから、たくさん稼げるよ」

 

夜の店の人に、そう言われたけど、お昼の普通の仕事を探した。

 

お金はなかったけど、子供と二人。

 

それなりに暮らして頑張った。

 

お料理も、お掃除も苦手。

 

でも、子供の服を縫うのは、上手かった。

 

安い布地や、古くなった服を解いて、子供の服を作った。

 

私の夢は、デザイナーだったんだ。

 

今は、子供を無事に成人させるのが夢だ。

 

子供は、どんどん大きくなる。

 

若過ぎる母親だから、色々言われたけど、黙って我慢した。

 

喧嘩したら、子供と暮らせなくなるから。

 

 

「付き合って欲しい」

 

色んな人がいう。

 

でも、子供もいるし。

 

「子供も面倒見るから」

 

でも付き合い出しても、すぐ別れが来る。

 

私が、彼より子供を取るからだ。

 

彼は、家族もいるけど。

 

私と子供には、代わりはいない。

 

誰とも、結婚なんて無理だと思う。

 

 

そのまま、子供が大きくなった頃、また彼ができた。

 

「結婚しよう」

 

でも、子供とは気が合わないみたい。

 

悩んでいたら、子供が言った。

 

「俺、一人で暮らしたい」

 

まだ子供だから、ダメだって言った。

 

「もう、15だもん。母ちゃん俺を16歳で産んだんだろ?」

 

その時、実家の父の顔が浮かんだ。

 

『まだ、16で何も出来ない』

 

母親には、なれないって言われたんだ。

 

私も、同じことを言ってるのかも。

 

その時、そう思ってしまった。

 

だから、子供の隠した気持ちには、気が付かなかった。

 

まだまだ、私は母親として落第なんだ。

 

色々、分かっていなかった。

 

生きていく事に、精一杯だった。

 

いつも二人だけで、頑張って来たから。

 

 

 

私の手が荒れてるから、ハンドクリーム塗ってくれたし。

 

可愛いからって、百均でマニキュア買ってくれる、優しい息子。

 

 

 

息子と離れて暮らすようになったら、今の彼は落ち着くかと思ったけど。

 

私が、いつも息子のことばかり考えてるから。

 

息子に会うと言うと、機嫌が悪くなる。

 

どんどん、息子へ会いに行く回数が減って行って。

 

どんどん、遠くなった。

 

折角、親子になったのに。

 

私なんかの子供に生まれて来てくれたのに。

 

お互い、どうして寂しく暮らすんだろう。

 

でも、彼も放っておけない。

 

彼は、子供への生活費も、学費だってくれて。

 

おかげで、子供は高校へも通えている。

 

私の恋は、人生を変えて。

 

私の息子の人生も変えていった。

 

 

 

どうしても、自分で育てようって思っていた。

 

何度も、大人に言われた言葉。

 

両親が揃ったお金のある家の方が、この子も幸せになるよって。

 

『自分だけでも、幸せにできる』なんて思う若い私。

 

ふたりぼっちの生活では、とても難しいとは知らなかったから。

 

そんな頑固さは、息子へ受け継がれているよう。

 

 

 

 

私の恋は、息子を生み出した。

 

息子の恋も、生まれていく。

 

私のようにならないでと、祈るしか出来なかった。

 

 

番外編「里子の恋」end