嵐BL妄想(お山OS)

登場人物等全てフィクションです

 

 

 

 

 

side 智

 

カズヤがいない店は、つまらなくて。

常連客の話を、笑顔で適当に聞き流しながら、時間が過ぎるのを待つだけの場所。

 

明日には帰って来るだろうか。

 

カズヤがいないと翔も来ないだろう。

彼が一人でこんな場所へ来るとは思えない。

二人の顔が見られない、それだけで憂鬱だった。

退屈な1日だと思いながら、酒を飲み干した。

 

照明にソファも、グラスも客の顔も見飽きた。

意味のない会話、意味のない時間。

そろそろこのホストの仕事も、やめ時かもしれない。

 

いつもは切ったままのスマホの通知をONにする。

カズヤから連絡が来て欲しかったから。

だけど。

お客達からのメッセージが、大量に通知されるだけだった。

 

 

 

 

side 翔

 

 

仕事が終わっても、する事がなかった。

毎日のように、カズヤくんの店へ通っていたから。

こんなに何日も、あの店に行かないことって、通うようになって初めてだった。

 

智は、今日も店にいるのかな。

顔を見られる唯一の場所が、あのホストクラブだった。

カズヤくん不在では、店には入れない。

ただ、寂しくて。

店のそばまで行こうと向かった。

 

 

 

 

+++

 

 

 

 

「あなたが翔さん?」

 

店のそばまで来た時、突然声が聞こえて振り返った。

 

「うわっ」

 

急に男二人に、両脇を抱えられて頭から黒い袋を被せられてしまう。

 

「何? 誰?! 離せよっ!」

 

訳が分からないまま暴れるけど、全く敵わない。

引きずられて行くと、車の音がした。

やばい、車に乗せられたら終わりじゃん!

 

「離せーっ!」

 

「暴れるな! 殺すぞ!」

 

「やめろ!」

 

何も見えないまま暴れていると、ふと手が離れた。

今だと、闇雲に走ろうとすると首に手が回された。

 

(ダメだ、首から落とされたら……!)

 

何人もの人の気配がする。

大声で揉める男たちの声。

突き飛ばされて、俺は道路に転がった。

 

必死で、頭の袋を取って見えたのは、3、4人の男たち。

そのうちの一人は、カズヤ君だった。

 

「カズヤくん!」

 

俺の声に振り返って、カズヤくんが叫ぶ。

 

「翔! 逃げろ! 早く!」

 

「えっ」

 

殴り合うカズヤくんは、もう血塗れだった。

 

思わずカズヤくんへ駆け寄った。

 

「バカっ! 逃げろって!」

 

そう言って俺の背中を突き飛ばしたカズヤくんは、盾になってくれて。

 

 

 

「カズヤ!」

 

体躯の良い綺麗な男性が、俺とカズヤくんへ叫ぶ。

 

その後ろから、数人の知らない人たちが、口々に叫びながら、俺を襲った男たちを倒していく。

 

知らない世界のようだ。

 

カズヤくんと揉み合っていた男も、殴られて吹き飛んだ。

 

ぐらりとカズヤ君の体が揺れて、必死で抱き止める。

 

俺の腕の中には、血まみれの少年。

 

まさか、俺のせいで?

 

すぐカズヤ君の体を調べると、刺されている。

 

さっき、俺の盾になったから?

 

「……カズヤ君!」

 

苦痛に歪んだ小さな白い顔で、震える指が俺の服を掴む。

 

「……いい? 俺が死んでも……智には……言うな……」

 

「え?」

 

「うっ……」

 

「カズヤ君!」

 

「生きて……るって……言いなよ……」

 

俺の腕の中で、少年の体が急に重くなって。

 

「ダメ! しっかりして!」

 

自分の声が、遠くから聞こえるよう。

 

智!

 

思わず、彼の名前を心の中で叫んだ。