嵐BL妄想(お山OS)

登場人物等全てフィクションです

 

 

 

 

 

 

 

 

side 翔

 

ホストだっていう綺麗な男の子に連れられて、智のいる店へ。

 

「どうぞ」と案内された、特別感漂う、1番奥の席は広かった。

 

「このまま待っていてね」

 

ニッコリ綺麗に笑った男の子は消えてしまい、俺の前には酒やフルーツが運ばれてくる。

 

一目で、高級だってわかる果物が、盛り付けられている。

 

値段なんて、見当も付かない。

 

「頼んで無いですよ?」

 

「いいえ、オーナーからです」

 

「お、オーナー?」

 

誰? と思っていたら。

 

 

 

「翔?」

 

隣の大きな席に……智がいた。

 

その隣には、他のホスト二人と女性客が二人。

 

「あ……」

 

どうしよう。

 

言い訳するべき?

 

こんなところまで、迷惑だろうし。

 

「何してるの? 誰と?」

 

智が立ち上がって、無表情のまま俺の前に来た。

 

これって、怒ってるよね?

 

 

 

「ご、ごめんっ。か、帰るねっ」

 

焦って立ち上がると、声がした。

 

「帰らないでよ、俺の客なのに」

 

さっきの綺麗な顔の男の子。

 

微笑んで立っていた。

 

「カズヤ……お前が呼んだのか?」

 

「呼んでないよ? 店の前で会っただけ。ジュース奢ってもらったから、今度は奢ろうと思って」

 

え? どう言うこと?

 

楽しそうな顔で男の子は、俺の隣に座る。

 

「なんか、話そうよ。智はお客が待ってるよ?」

 

「……」

 

整った顔を、一瞬だけ眉をひそめて、智は客の待つ席へ戻って行った。

 

智は、それから1度もこちらを見ることもなく、話しかけることもなかった。

 

 

 

「お兄さん、気を使わないで。好きなようにしていて?」

 

「うん……あの。ここのオーナーって誰? このテーブルの上、オーナーからだって」

 

急に、口元を腕で隠して男の子が笑いだす。

 

「もらっておけば? 気まぐれにくれるんだ。食べよう?」

 

「そうなの?」

 

すすめられてフルーツを口にしながら、目の端では智を追ってしまう。

 

女性が笑って、智にしなだれかかる。

 

薄く微笑んだ智は、好きにさせている。

 

 

 

『女は嫌い』

 

そう言っていた言葉が、よみがえる。

 

……どうして、ここで働いてるんだろう?

 

きっと、辛い。

 

お母さんのことが好きな分の裏返し。

 

母子で色んなことが、あったんだろうな。

 

俺に依存するくらい、寂しかったはず。

 

 

 

 

……そう、依存。

 

俺以外いなかったんだ。

 

高校生で、一人きりの生活だった智。

 

俺じゃなくても、きっと良かったんだ。

 

でも、結局また傷つけた。

 

泣かせておいて、今更心配するなんて勝手すぎるよ、俺って。

 

 

 

考え込んだ俺を、綺麗なカズヤって子は、黙って見つめていた。

 

賑やかな声と音楽の中で。

 

自分だけが、違う世界にいるんだと、強く思った。