嵐BL妄想(お山OS)

登場人物等全てフィクションです

 

 

 

 

 

 

side カズヤ

 

 

自分の人生は、いつも思った通りにできなくて。

 

いろんなものに縛られて生きてる。

 

望んでいない事ばかり、与えられて。

 

欲しいものは、何1つ手に入らない。

 

ホストクラブのオーナーなど、やりたいわけが無かった。

 

自由も、選択権もない身だ。

 

この先、今度は誰かと結婚させられて。

 

あるいは、誰かの持ち物にされるんだろう。

 

明日のことなど考えたくない。

 

明日のためとか、将来のためって言葉が1番嫌い。

 

体の為なんて、最悪だ。

 

食事するのも、嫌いだった。

 

 

 

謎のオーナーのままでいたかったけど。

 

揉め事の予感。

 

店の周りのおかしな客の出入りの報告が入る。

 

どこかの組の下っ端の愛人崩れ。

 

捨てられそうになって、男の関係しそうな店を暴れて渡り歩く女。

 

関わりたくない関係だ。

 

女一人のうちに、追い払わなきゃいけなかった。

 

 

 

自分の店へ入って、客のふりでテーブルへ。

 

ホストはゲイもいるから、そっち系に思われてる。

 

何も起こらなければ、黙って帰ろうと思っていた。

 

 

 

だけど案の定、女が暴れ出した。

 

従業員の対応も見たかったから、様子を眺めていた。

 

新人は蹴られて、悲鳴をあげてるし。

 

スタッフが、変わるがわる謝ってる。

 

女は、この店のトップを呼べという。

 

最近のトップは、見てなかったから、自分も顔を見ておこうと思ってた。

 

 

 

奥から、出てきた男は、智という若い男。

 

綺麗な顔に、雰囲気のある暗い空気がまとわりついている。

 

媚びない顔は、笑顔も少なそう。

 

新人のために、土下座しようとするからカッとした。

 

頭に来て、その辺の酒の瓶を開けて、女へぶちまけた。

 

悲鳴をあげるけど、痛いわけじゃない。

 

これ以上暴れたら、この女もタダでは済まないだろう。

 

自分の男のいる世界の怖さが、分かっていないなんて致命的だ。

 

この女は男の足を引っ張るのが目的なんだろうが、それはそのまま女の身にも降りかかるんだ。

 

 

 

適当に金を払わせて、出禁扱いへ。

 

俺がオーナーと聞いて、驚くスタッフ達。

 

こんな若いオーナー、気持ち悪いだろうけど。

 

さっきの対応を思いだして、店のトップの男の前に立つ。

 

 

 

「この店の看板背負ってる男が、土下座するんじゃねえよ」

 

店の格を落とされるのが、絶対ダメ。

 

それしか、この世界は価値が無い。

 

ホスト狂いの女は、高いものにしか興味がない。

 

店を潰すわけには、いかない。

 

それが、自分の役割だから。

 

 

 

驚いた顔をした智。

 

まだ若いけど、俺の少し上かな。

 

今までのホストとは、まるで違う感じだった。

 

トップだけある色男だけど。

 

欲を感じない。

 

何もない、空っぽな心が透けて見えた。

 

俺も空っぽだったから。

 

興味があった。

 

 

 

+++

 

 

 

どうして、ここへ来たんだろう。

 

稼いでいるのに、贅沢もしてないらしい。

 

飲みにも、遊びにも行かない。

 

何が楽しいんだろう。

 

俺と一緒の……不思議な人。

 

 

 

ぼんやり顔を見てたら、彼が言った。

 

「腹減ったな。飯でも食べようか?」

 

まるで、子供へ言うように、微笑んで言われた。

 

「飯?」

 

「ああ、食べようよ」

 

 

 

ホストに見えない、くったくない笑顔で言う。

 

食べたくないけど、無理やり食べに連れて行かれた。

 

その日から、俺の家まで強引に来るようになったんだ。

 

「痩せすぎだから、俺が面倒見てあげるよ」

 

誰かを、家へ入れるなんて、初めてだった。