嵐BL妄想(お山OS)
登場人物等全てフィクションです
side 翔
俺が学校を辞めてから、数年経った。
ずっとその後の智が気になりながらも、噂すら届かない場所にいたから知らなかった。
智は人気者だったが、特別仲のいい子は少なかった。
偶然街で会った後輩の男の子が、教えてくれた。
智は、すぐ学校を辞めてしまっていたと。
この子だけが、俺と智の関係を知っていて応援してくれていた。
智は学校を辞めてから、アルバイトをたくさんしていたそうだけど、最近は連絡が来なくなったそうだった。
「先生、智さあ……ホストやってるみたい」
「え? ホスト?」
「顔でスカウトされたって、言ってたけど」
「その店、どこか知ってる?」
「名刺もらったよ、先生にあげる」
どんな店か、ホストクラブなんて行った事ないから、名刺からは分からなかった。
心配で住所へ行ってみると、大きなビルの最上階らしい。
ビルの前には、色んな人が行き交っていた。
店はまだ閉まっている時間。
何時に開くのか、分からなくて。
ホストクラブの近くの喫茶店で、一人でコーヒーを飲むことにした。
喫茶店の客は、夜の店の人らしい煌びやかな女性がたくさんいた。
「ああ、あそこのホスト、やばいのいるって」
「ああ、智でしょ?」
えっ?
振り返ると、ホステスなのか華やかな格好の女性の二人組。
「いいよねえ〜ああいうのが、うちの客で来ないかなあ」
智のこと?
同じ名前?
ホストの姿なんて想像できない。
もっと話が聞きたかったけど、彼女たちはすぐ出て行ってしまった。
でもホストって、女性と……。
女性嫌いだった智が、どうして?
今も、ホストをしているの?
どうしていいか分からなくて、とにかく喫茶店の外へ。
すると、通りの向こうから一人の男性が歩いてきた。
周りは、若い男や女性が取り巻いていて。
無表情で、少し俯き加減。
黒っぽいスーツのポケットに手を突っ込んで歩いてる。
男性の綺麗な所作とオーラに、皆が振り返る。
誰より美しい男性だ。
「智……」
それが、別人のような智だった。
瞬きも忘れて、見つめて立ち尽くす。
声をかけるのも、躊躇ってしまう。
すぐそばで、智が立ち止まった。
俺と目が会う。
「翔?」
「智……」
驚いた顔は、すぐ無表情に戻ってしまう。
「お前ら、先に行け」
智の一言で、取り巻きはビルへ入って行った。
「智……どうして?」
こんな俺が、何も言えることは無い。
でも、言葉がこぼれてしまった。
「翔こそ、何してるの? こんな場所で」
「智の友達が、ここで働いてるって教えてくれたんだ、心配になって」
「……働いてる。ダメ?」
「いや……そうじゃ無いけど」
なんて言えばいいか、言葉が見つからない。
俺には、何も言う資格はない。
「早く帰った方が良いよ」
そう言って、初めて智が作り笑いを見せたんだ。
別人のような綺麗な笑顔は、ショックだった。
「じゃあ……」
そう言って彼は、ビルへ消えてしまった。
俺はショックのまま、しばらく動けなかった。