嵐BL妄想(お山OS)

登場人物等全てフィクションです

 

 

 

 

 

side 大野智

 

この世には、死ぬ前の日でも間に合う事と、間に合わない事がある。

 

人の心は、間に合わない事が多い。

 

突然、帰って来た母ちゃん。

 

翔に諭されて、俺の家に帰って来た。

 

また一緒に住もうって言い出して、泊まって三日目だ。

 

母ちゃんの男も、たまに来る。

 

 

 

「武志は邪魔っ。 もう帰って」

 

「ひどいよ、俺も家族にしてくれ」

 

可愛い顔だが、言い出すときかない母ちゃん。

 

親子二人で暮らすとか言うし。

 

男は、困ってるし。

 

そんな頑固な姿が、自分に似ていて、嫌になる。

 

この男も、大変だな。

 

 

 

「母ちゃん、もう帰れ」

 

用意してくれたご飯とおかずが、目の前へ並ぶ。

 

それには手を付けずに、俺は言った。

 

料理の下手な母ちゃんの飯は、とても食えない。

 

一生懸命作ってくれたけど、こんなに不味そうな、不細工なご飯は初めて見る。

 

昔より下手になってるのは、作ってもらってるからか。

 

 

「ごめん、そんなに不味いかな?」

 

「だから、里子の代わりに俺が作るって……」

 

いつも、この男が作ってたんだな。

 

賢明だ。

 

母ちゃんにはセンスがない。

 

 

 

「不味いし、一人になりたい」

 

「だって……翔さんが……」

 

「勝手に翔の名前を言うな!」

 

翔の名前に、頭へ血が上った。

 

「ごめん……どうしたらいいの」

 

母ちゃんは泣きそうだし、男はオロオロしてるし。

 

面倒でイライラする。

 

でも、俺が初めて母ちゃんを殴った跡が、可愛い顔に残ってるのを見て悪いなって思った。

 

母ちゃんのおかげで生まれて、今まで生きて来られたんだから。

 

生まれて、何とか生きて来たから、翔にだって会えたんだ。

 

 

 

「母ちゃん、俺、ずっと母ちゃんと住みたかった」

 

「う、うん、気が付かなくて……ごめんね」

 

そう、昔は寂しかった。

 

翔に会うまでは。

 

「でもさ、もう、住みたくなくなったんだ。ごめん」

 

「……」

 

「俺、住みたいのは、もう翔だけなんだ。他はいらない」

 

「……」

 

 

遅かったよ、母ちゃん。

 

もう俺は大人になっちまった。

 

母親を思って泣いていた日は、思い出なんだ。

 

拗れて切れた気持ちは、壊れて戻らない。

 

壊れた気持ちを、慰めてくれたのは翔だけだった。

 

 

 

今更、親子で一緒にいたって無理なんだ。

 

もう、戻らない。

 

どうしようもない、この心は。

 

この気持ちは、誰とも共有できない。

 

母ちゃんを嫌いだとか、そう言う事じゃない。

 

必要かどうか、そこだけなんだ。

 

 

 

もう、親はいらない。

 

そう思うだけ。

 

きっと好きな人ができたから。