嵐BL妄想(お山OS)

登場人物等全てフィクションです

 

 

 

 

 

 

 side 大野智

 

先生が、優しくなった。

 

俺って、同情されてるのかなあって思う。

 

まともな親もいないし、一人ぼっちでアパート住んでるからかな。

 

(一応、母ちゃんは、いるんだけどさ)

 

放課後とか、一緒に勉強まで見てくれるようになった。

 

一緒にジュース飲んだり、おしゃべりもしてくれる。

 

良いんだ、同情でも。

 

俺は先生といたい。

 

 

 

「腹減ったなあ」

 

ある日、帰りに勝手に、口から出た言葉。

 

先生は、ちょっと考えてから。

 

 

 

「一緒に……飯でも食べる?」

 

「え? 良いの?」

 

「良いよ。でも他の人には内緒ね」

 

「うんっ!」

 

 

 

先生と牛丼買って、俺の家に帰ったんだ。

 

(先生の奢りだっ。今度は奢りたい)

 

 

 

二人で歩くと、先生は綺麗だから皆が見てる。

 

いつもと同じ道とは思えないくらい、キラキラして見えた。

 

何でもない話をしながら歩く。

 

そんな事が、楽しいなんて思わなかった。

 

先生も、気のせいかすごく楽しそうな笑顔。

 

俺だけ見てるんだ。

 

そう思ったら、幸せ過ぎた。

 

 

 

 

晩御飯、誰かと食べるなんて、何年ぶりかなあ。

 

(お昼は、学校だから)

 

お茶を淹れたり、買ってきた牛丼を並べたり。

 

小さなテーブルは、二人でぴったりなサイズ。

 

 

 

 

「先生、美味しいっ」

 

「本当? 良かった」

 

ニコニコして先生は、嬉しそう。

 

綺麗な顔、大きな目と唇が気になっちゃう。

 

急に恥ずかしくなった。

 

「……」

 

「どうしたの?」

 

「えへへ、久しぶりなんだ。誰かと晩御飯食べるの」

 

「え、そうなの?」

 

先生の瞳が、心配そうに揺れる。

 

優しい人だなあ。

 

俺、ズルいかもしれない。

 

 

 

「ごめん、先生。俺ってズルいよね」

 

「どうして?」

 

「先生、同情してくれてる。分かってる。でも、それでも嬉しい」

 

「大野……」

 

「良いんだ。俺、先生が好きだから。理由はなんでも。一緒にいてくれて嬉しい」

 

 

 

自分で言っておいて泣きそう。

 

そうだよな、こんな俺。

 

好きになって貰えないんだ。

 

そう思ったら、悲しくなった。

 

 

 

今まで知らなかった。

 

一緒にいるのに、悲しくなるなんて。

 

ただ、好きなのに。それで良いのに。

 

好かれてないってだけが、死ぬほど辛い。

 

生まれ変わったら、先生に愛してもらえるような男になりたい。

 

「大野、なんて言っていいか……」

 

先生は困ったように、俺を見つめる。

 

困るよね、好きだって言われて。

 

 

 

……もう最後にしよう。

 

だから。

 

「先生、1回だけで良い。キスしてもいい? もう……そうしたら諦める」

 

「え?」

 

必死に先生を見つめる。

 

ダメかな。

 

まだ、誰ともした事ないんだけど。

 

 

 

 

「……分かった、良いよ」

 

先生はそう言って俺の前で、目を瞑った。