*嵐妄想小説
*BL小説
*お山妄想
*お話の全てはフィクションです。
(1)
side 翔
俺が15歳の春。
小さな羽を持った、可愛い子が、我が家にやって来た。
智くん、5歳。
里親になった両親が、一人っ子の俺の兄弟にと考えたようだった。
智くんは、その日からこの家の次男の智君になって。
俺の大切な家族になった。
***
「智君っ! ほら! 早くして! 遅れちゃうから!」
朝から、俺は忙しい。
あれから時が過ぎて。
もう13年経って、智君は18歳になった。
冬の朝は、寒くて布団から出られないのは、わかるけど。
「翔ちゃん……先に行っていいよ……俺、遅刻していく……」
ぐるぐると、布団を巻き付けて、起きようとしない。
「ダメだって!」
夜ふかしする智君は、朝が弱い。
会社へ行く前に、智くんを無理やり起こして、学校へ送るのが、もう日課だった。
「ほら、着替えて、顔洗いなさい!」
「ふええ……眠いよお……」
「みんな、眠いんだっ!」
ヨロヨロと、洗面所に向かう智君が、ちょっと可哀想に思うけど。
学校に行かせないと、仕方ない。
今は、俺と智君は、二人きりの家族。
俺がちゃんと、見てあげなきゃならない。
三年前、交通事故で両親が他界してしまった。
いつも、母が言っていたのは、予感があったのかも知れない。
「翔ちゃんを、私たちに何かあっても、一人にしたく無いから、智君を引き取ったの」
その予感通り事故は起こり、智君のおかげで、俺は一人には、ならずに済んだ。
両親がくれた、可愛い弟で、家族の智君は今の俺の宝物だった。
***
side 智
翔ちゃんは、いつも学校に行けって、うるさい。
なんか、意味ある?
三年前、父ちゃんと母ちゃんが死んで、すぐ俺が働きたいって言ったのに。
「学校行かなきゃ、許さない」
そりゃ、お金は困ってないかも知れないけど。
俺なんて、勉強嫌いだし。
学費だって、時間だって勿体無い。
働いた方が、役に立てるんだ。
……血も繋がっていないのに。
俺の為に、頑張ってくれる翔ちゃん。
俺も、翔ちゃんに何かしてあげたいんだ。
せめて、早く大人になりたい。
だって、翔ちゃんは、俺の親代わりじゃなくて。
もう、ずっと前から。
……俺が、恋するただ一人の人だから。
**
教室に入って、机でもう一回寝よう。
鞄を机に押し込んで。
(ほぼ、何も入ってない。学校のロッカーに全部教科書は置いたままだ)
「翔ちゃん……」
切ない片想いは、叶わないまま。
翔ちゃんの夢が見られますようにと、机で突っ伏してたら、先生に怒られて廊下で立たされた。(泣)
(つづく)