(BL/櫻葉AS/妄想小説)
(3−2)「坊っちゃまは、知らない」
坊っちゃまの1日の終わり。
大好きな執事に、振り回されて終わるのが常である。
「はあ……今日もドキドキした……寿命が縮みそう……」
1日が終わったけれど、夜も遅い屋敷の中。
「ダメだ。寝られないよ……」
執事に触られた場所が、思い出すと熱くなる。
早い時間にお風呂は済ませたけど、眠れなくてシャワーでも浴びようと坊っちゃまは浴室に行った。
ガシャーン……!
浴室の前まで来ると、浴室の中から、何かが大きな音を立てた。
「な……何?」
慌てて、大きな浴室の扉の奥に駆け込んだ。
「……? っ翔ちゃん!」
執事が、床に全裸で倒れていた。
「どうしたのっ?!」
駆け寄って、慌てて膝に抱き上げると、荒い息で、熱があるようだった。
坊っちゃまは、大きなバスタオルで、執事の全裸の体を綺麗に包んであげる。
「雅紀さま……すみません……大丈夫ですから……」
「大丈夫じゃ無いって。具合悪いなら、休めば良かったのにっ」
そういえば昼間、膝に座った時も、やたら体は熱かった気がする。
「……休んだら、雅紀さまに会えないじゃありませんか……」
少し伏せ目がちに潤んだ瞳で、そう言って見つめられて、息が止まりそうになった。
「翔ちゃん……」
熱のある赤い頬で、ふふっと執事は笑うと、悪戯っぽく囁いた。
「今なら、私は動けないし、抵抗できませんよ。……触りますか?」
坊っちゃまは一瞬、目を見開くと泣きそうな顔で叫んだ。
「バカ! こんな時まで、冗談言うなよ!」
「雅紀さま……」
坊っちゃまは、執事を急いで抱き上げると、自分の寝室まで運んだ。
自分の大きなベッドに執事を寝かせると、薬や、頭や体を冷やすタオルを用意した。
執事の体は見ないようにして、自分の綺麗な絹のガウンを着せて。
「いつから、熱があったの? 風邪かな……」
「熱は、多分……二日前から……」
知らなかった。
じゃあ昨日から?
「もう、こんなに具合悪いのに、風呂なんて……」
「坊っちゃまに会うのに、綺麗にしておきたくて……」
「綺麗じゃなくても、翔ちゃんが好きだよ。だから、無理しないでっ……心配するから……」
そう言ったら、勝手に涙が溢れた。
子供のようで恥ずかしい。
執事の事になると、小さな男の子のように動揺してしまう。
背中を向けて、離れようとすると、か弱い力で腕を掴まれた。
「……一緒にいて下さい……ダメですか?」
高熱で、潤んだ瞳で縋るように、見つめられる。
ダメだなんて、言えなかった。
続く