(BL/お山OS/妄想小説)
(1)
side 翔
秋も深まって、木々も色付き、風も冷たくなった。
会社からの帰り道も、日々暗くなっていく。
昔だったら、なんだか寂しくて。
帰宅する前に友達と飲みに行ってからとか、なっていた気がする。
でも、今は急いで帰る。
もう、一人暮らしじゃ無いから。
一緒に住む彼は、一生を誓った人で。
毎朝一緒に起きて、毎晩一緒に眠る。
それだけで、幸せに思える素敵な人と暮らせるなんて。
「……俺って、すごく幸運だなあ」
この幸運に感謝出来るのも、すごい事だと思う。
「寒いからなあ……鍋でも良いかなあ」
今日は、俺の方が帰宅時間は、早いはず。
あんまり料理は得意じゃ無いけど、鍋なら簡単だもんね。
智君の顔を思い浮かべながら、スーパーへ買い出しに向かった。
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スマホが鳴って、見てみると智君からメッセージ。
「あー……仕方ないなあ」
スーパーを出ようとした所だった。
もう、レジ通って買っちゃったのにな。
『ごめんね、遅くなるから、先に寝ていいよ。晩御飯も要りません』
ものすごく、寂しくなったけど。
今日って、メニューは、お鍋なんだけど。
『大丈夫、気を付けて頑張って。帰ったら起こしてね』
急いで、メッセージを送って。
ちょっと重くなった気がする足で、家を目指した。
「一人で鍋って、どうするかなあ」
商店街の途中で、たこ焼き屋さんがあった。
「たこ焼きでいいかなあ……」
そうそう、ビールとたこ焼きで済ませちゃおうか。
「すいません、たこ焼き下さい」
「お兄さんイケメンだね。おまけしてあげる」
「はは……ありがとうございます」
愛想の良い、太った男前のお姉さん。
あったかいたこ焼きを買って、ちょっと元気が出た。