(BL/お山OS/妄想小説)

 

 

 

 

side 智

 

 

翔ちゃんが、泣きそうな気持ちの時は、分かるようになった。

 

たった1日預かっただけだけど、仔犬に情が湧いてしまったから。

 

悲しいのを我慢してる翔ちゃんの背中。

 

……くそ、マメの奴め、俺の翔ちゃんのHeartを盗んじゃったな?

 

まあ、可愛いから許してやろうか。(甘)

 

 

 

1日、マメと楽しかったし。

 

俺は、犬は好きだし、昔飼ってたから、別れも知ってる。

 

生き物を飼うって、そういうこと。

 

どんなに好きでも、別れる日は必ず来るって教えて貰ったんだ。

 

でも、そういう経験の無い翔ちゃん。

 

きっと、とっても寂しいはず。

 

不器用な分、別れも上手く付き合えなさそう。

 

きっと、年をとって、これからは色んなお別れが、始まるはずだから。

 

俺だけは、長生きして翔ちゃんを、辛いことから守ってあげたい。

 

 

 

******

 

 

 

ゲージも、最初から無かったみたいな部屋に戻った。

 

静か過ぎたから、とりあえずテレビをつけてみる。

 

二人で並んで、ソファに座ったら、ポツンと翔ちゃんが言う。

 

「智くん。ごめんね?」

 

「なんで、謝るの?」

 

「だって……智くん、マメを気に入ってたのに……」

 

しょんぼり、そんなこと言うから、笑って肩を抱いてあげる。

 

「寂しいのは、翔ちゃんだろ? 俺は、翔ちゃんだけで、大丈夫だもん」

 

「そうなの?」

 

「そうだよ、翔ちゃん独り占めだし」

 

優しい翔ちゃん。

 

俺が寂しいと思うのは、翔ちゃんがいない事だけ。

 

「翔ちゃん、寂しいなら犬か猫飼う?」

 

「え? いや……ココは、ペット禁止だし」

 

「引っ越せば良いじゃん」

 

「そんな簡単に……」

 

「俺は、どこだって暮らせるもん」

 

「ありがとう、でも、俺も智くんがいたら大丈夫だから」

 

でも、大丈夫そうに見えないけどな。

 

いつか欲しいって、なるかもね。

 

その時は、その時で。

 

きっと楽しいに、違いない。

 

翔ちゃんと二人ならね。

 

「これからはさ、もっと将来のこと考えようよ」

 

「どんな……?」

 

「たとえばさ、40歳になったら海外へ移住とか。田舎に家をもう一軒借りるとか、買うかしてさ。週末は、二人でそこで、思い切り遊ぶとか」

 

「えっ、すごくない?」

 

「凄いでしょ? ほら、ずっと二人なんだし、もっと自由に暮らそうよ」

 

「自由……で、良いの?」

 

心配性の翔ちゃんは、きっとまた、取り越し苦労しようとするから。

 

「自由なんだよ、俺たち。別れるのはダメだけどさ。色んな予定とか目標立てて、人生を進んで行こうよ」

 

「なんか……凄い……素敵だね」

 

パッと、翔ちゃんの顔が明るくなった。

 

ほら、二人で見る夢は、きっと幸せな未来を連れてくるよ。

 

「俺も仕事頑張ってさ、もっと稼げると思う。翔ちゃんも今のペースで仕事して。翔ちゃんが、仕事辞めたくなったら、移住したり、世界旅行しない?」

 

「俺に合わせちゃって……良いの?」

 

「良いよ。翔ちゃんがいなきゃ、意味が無い」

 

「嬉しい……ありがとう智くん」

 

「二人でいようね、何があってもね? 分かった?」

 

「うん」

 

普通の結婚とは違うなら。

 

人と違う計画を立てよう。

 

大切なのは、お互いが楽しくて、不安じゃ無い暮らしだから。

 

翔ちゃんのためなら、なんだって叶えるよ。

 

それだけが、俺の働く人生の意味だから。

 

 

 

ほら、さっきまで寂しそうだった翔ちゃんが、笑ってるもん。

 

俺の言ったことも、間違ってなんか無いはずだ。

 

恥ずかしそうに、翔ちゃんが言う。

 

「俺も言っていい? 俺も、智くんだけが好きだから……」

 

言いながら、そっと抱きついて来てくれたから、その後は唇を奪って言わせてあげなかった。

 

 

 

***

 

 

 

昨日も今日も、1年後も、10年後も、君が好き。

 

大切なのは、それだけ。

 

君だけだから。

 

 

第7話<end>