(BL/お山OS/妄想小説)

 

 

 

 

 

side 翔

 

仔犬のマメが、部屋のあちこちで、トイレしちゃうから。

 

「うわーヤバイヤバイっ!」

 

智くんと、追いかけて捕まえて、掃除に追われるし。

 

仔犬のマメが、俺のお腹の上で、お昼寝しちゃったから。

 

そのせいで、テレビの前で、横になったまま、動けないから。

 

「翔ちゃんのドリンク持ってきてあげる、何が良い?」

 

智くんが、スパダリみたいに、なんでもしてくれて。

 

いつもより、何度もキスしてくれる。

 

……マメのおかげ?

 

「え? マメが居なくっても、優しいだろ?」

 

そう言うけど。

 

なんだか、違うんだ。

 

うまく言えないけど。

 

智くんは、マメにも優しいけど。

 

いつもより穏やかで、すごく優しくしてくれる。

 

 

 

 

***

 

 

 

side 智

 

 

翔ちゃんて、こんな可愛かったかなあって思うほど、今日は可愛い。

 

犬のことが、まるで分からないみたいで。

 

ひとつひとつ、驚いて飛び上がりそうになってる。

 

それでも、必死で仔犬の世話をして。

 

仔犬が、お腹に乗ってきたら、動かして良いのに、可哀想だからってそのままの姿勢。

 

「翔ちゃん、もし子供いたら、めちゃくちゃ甘そうだな」

 

「へ? 子供? 考えたことも無いよお……」

 

「ふふ、俺も。今、初めて思ったよ」

 

やっぱり困り顔の翔ちゃんは、仔犬みたい。

 

「散歩行こうよ」

 

ヨイショって、マメを翔ちゃんから、引き剥がす。(しがみ付くんだから)

 

「こら、マメ、調子いいぞ? 甘えん坊め」

 

俺の声も、相当甘いなあ。

 

 

 

 

*****

 

 

 

side 翔

 

 

初めてのお散歩。

 

初めて首輪にリードもつけて。

 

智くんは、慣れた風でマメとドンドン歩き出す。

 

公園に入って、池の周りを歩いて。

 

綺麗な花も、木もあるけど、目に入らない。

 

俺は何か踏んで怪我しないか、池に落ちないか、マメの足元をガン見して、ドキドキしてついて行くからヘロヘロになっちゃう。

 

 

「翔ちゃん、心配性だなあ、人間より犬の方が素早く避けられるよ」

 

「ああ……そうか」

 

 

踏んで怪我しそうなのは、俺だなあ。

 

 

「俺は、翔ちゃんの方が心配だよ」

 

「俺も、そう思う」

 

 

二人で顔を見合わせて、大笑いした。

 

小さなマメが、急に足を止めて見上げてくる。

 

「どうしたの?」

 

すると、智くんが微笑んで、マメを抱き上げた。

 

「まだ、ちっこいからな。疲れたんだろう」

 

「そっか……小さいもんね」

 

自分の服が汚れても、仔犬をキュッと抱きしめて。

 

智くんは、本当に優しいんだ。

 

マメも嬉しそうな顔で、智くんの腕の中。

 

こんな彼と一緒に暮らせるなんて、俺って幸せだなあ……。