(BL/お山OS/妄想小説)
秋の終わりに生まれた子供は、食べ物には、恵まれないんだって。
冬に向かって生まれるから。
春の恵みも、夏のたくさんの作物も、秋の実りも、終わった季節だから。
だから、秋の終わりに生まれた子供は、愛情だけを食べて育つんだよ。
愛情だけが、生きていく糧だから。
***
寒くなった朝は、なかなか……お布団から出られない。
あったかい恋人が、俺の体を抱きしめてくれてるから。
朝、そこから出るのは、とっても、大変だ。
「さ……智くん……ちょっと、もう出ないと間に合わないから……」
「翔ちゃん、早くない……?」
「早くないよ、ほら、俺がコーヒー淹れてあげるから」
「やだ」
本当に、最近は寒くって、智くんの体は、あったかくって困ってしまう。
「チューさせてくれたら、いいよ?」
今日も、可愛い意地悪で、甘い恋人が、幸せな朝にしてくれる。
***
世間は、クリスマスシーズンで、イルミネーションが並んで、輝いている。
去年は、智くんと何度も、一緒にご馳走を食べて過ごしたけど。
一緒に、食べる毎日の普通のご飯が、もっと幸せなんだって、最近知った。
***
クリスマスよりも、前に祝うのは、智くんの30歳の誕生日だ。
智くんは、秋が似合う。
静かで落ち着いていて。
でも、どんな人よりも、男らしい、自慢の恋人だ。
これから来る冬にも、きっと負ける事はない。
どんな風に、祝ってあげようか、考えるのも楽しかった。
***
部屋に貼ったカレンダー。
智くんの誕生日の週末に、丸が書いてあった。
「この日、なんかあるの?」
「うん、翔ちゃん、その日、休み取れる? 最近、休日出勤多いでしょ?」
「忙しかったから。でも、落ち着いたから、普通に休めるよ? どこ行くの?」
「一緒に、俺の親と会いに行ってくれないかな?」
「え……」
ニコニコ智くんが、笑っていう。
「翔ちゃんと、一生一緒にいるって、報告しても良いかな?」
「あの……。俺でいいの? 親御さん、怒んないかな……?」
「もう、いっぱい、翔ちゃんの話は、して来たから。自慢ばっかりすんなって、言われてるよ」
なんだか、俺はビックリして、ヘナヘナと座り込んでしまった。
そんな俺を、智くんは笑って、抱きしめてくれる。
「一生一緒にいよう? 良いかな?」
「……うん、一生一緒にいて……」
「ありがとう」
……思い切り、その夜は愛されて、嬉しくって泣きながら眠った。
智くんへの、プレゼントを考えていたのに。
智くんから、とびきりのプレゼントを貰ってしまった。
***
「誕生日、おめでとう、智くん」
誕生日の朝、簡単な朝食を二人で食べながら、お祝いを言う。
「ありがとう」
「智くん、何か欲しいもの、無い? まだ、お祝い買えてなくって」
「もう、貰ってる。翔ちゃんは、もう俺のモンだから。だから来年も再来年も、一緒にいてくれたら、何にもいらない」
時々、智くんは、爆弾のような言葉をくれて。
俺は、嬉しくて、泣くしか無くなってしまう。
一緒にいると幸せで、幸せにしてあげたい……ただ一人の人。
泣き顔が恥ずかしくて、腕で隠したけど。
「翔ちゃんは、俺が一生守るから。翔ちゃんは、俺だけ見てて」
優しく抱きしめて、胸に泣き顔を隠してくれた。
「うん……一生……智くんだけ……見てるから」
***
秋の終わりに生まれたから、愛情だけを食べていく。
凍る冬も、北風も怖くない。
この胸の愛情だけで、生きていけるし、戦えるんだ。
俺は、君だけが好きだから。
昨日も、今日も、明日も、明後日も。
君も、俺だけを愛していてね。
……生まれてきて、良かった。
素敵な、君に会えたから。
Happy birthday to SATOSHI.
智くん、お誕生日おめでとう。