あいつと会う時っていつも雨
俺が雨男だって思っていたけど
実はあいつじゃないかって最近思う


待ち合わせはいつもの喫茶店
昔ながらの店の雰囲気が好きで
よくそこに居るのをあいつに見つかった
それ以来あいつと会う時は
自然とこの場所になっていた


傘を閉じて重厚な作りの扉を開けると
カランっとドアベルが小気味よく鳴る
俺は何気にこの音が好きだ

あいつがこの音に反応して振り向くから
まん丸の瞳が俺を見て三日月みたく
細っこくなる
その瞬間がたまらない。


「悪い、待たせた!」

「いや俺も今来たとこ」



そんな会話でいつも始まる
手元のコーヒーが冷めてるくせに
いつだって気を使う




そんなところも、たまらない。


「で、話ってなんだ?」


珍しく呼び立てたからには
何か話しでもあるのかと思い
そう言ってみたのだが

一向に切り出さない


遠くを見たかと思えば
手元に視線を落とす

.......。


なんだ?この落ち着きのない仕草


見たことの無いこいつの態度に
一抹の不安を覚える

しばし沈黙が続き
冷めたコーヒーを口にしたあと
奴の発した言葉に耳を疑った


「す、好きな人出来た」




窓に当たる雨粒がでかくなって
音を立て始めていた