エレベーターを降りて

智くんの家のドアを開けた後の

記憶が・・・あまりない

 

 

目にした光景に一瞬で

頭の中の何かがスパークして

まっすぐ松潤に向かって行ったんだ。


気付いたら身体が浮いて

鈍い痛みと共に、わずかに

鉄の味がしていたことくらい・・・

と、あと1つ。

 

何が起こったのかはこの後

智くんから聞くこととなるのだが


去り際の松潤の顔は

多分二度と忘れ無いと思う

あれは、紛れもなく

今までの俺と同じ顔だったから。




柔らかい間接照明の光が目に入る。

その光を背にして浮かび上がる

シルエット。


「、、痛ってて」



ボウっと見ながら思わず漏れた声に



「・・・翔くん、全然変わんないな」



そう言って俺の頬を冷やしてくれる智くん


クスクス笑う声が懐かしい。


そういえば笑い声聞いたのも

久しぶりな気がした。






「なんか、ごめん。色々と」



「・・・うん」



「あの、っさ、」



「・・・うん」



「その、服・・・着た方が」




少し薄暗い部屋の照明に慣れたころ

目にの前にあられもない姿でいる智くんがいた。


流石に目のやり場に困る。



一瞬自分を眺め、

ハッとして顔を上げる智くんと

バッチリ目があった瞬間

どちらともなく視線を逸らし

長い沈黙が続く



濡れた前髪からわずかに見える鼻筋

陰影のはっきりした

首筋から鎖骨にかけてのライン

相変わらず均整のとれた肢体



「・・・・・。」



こんな状況なのに

俺は何を考えているんだ?

そもそも勝手に勘違いして

多大なる迷惑をかけて・・・

挙句に俺は、



ハァ〜、最低だ。





「・・・なんで、戻ってきたの?」




智くんが沈黙を破る

心なしかその声は

・・震えている様な気がした。


ゆっくり向き直る智くんの顔からは

笑みが消えていた。



あてがっていたタオルが手から落ちる



ズキズキと痛み出した頬にこもる熱

俺の心臓にも・・・



「・・・ごめん」



同時に智くんを抱き寄せていた。