「翔くん、今日の夜って仕事?」

 

朝飯を食べているとき

珍しく智くんが俺の予定を聞いてきた

 

 

「仕事じゃない!」

 

即答する俺にぽかんと口を開ける智くん

すぐにニッコリ微笑むと

 

「じゃぁ、予定空けておいて?後で連絡するから」

 

出来立てのトーストと

ハムエッグを皿にのせながら

ウインクをする・・・

 

ク~~~♡

可愛い!!!

 

 

・・・・・・・ん?

これって・・・デート?

デートの誘いってことでいいのか?

 

急にバコバコと心臓が高鳴りだす

パンとハムを口に詰め込むと

いれたてのコーヒーで流し込む

熱さが後から伝わり

思わず顔をしかめた

 

そんな俺を

クスクス笑いながら見つめる智くんが

あまりにも可愛くて

つい・・・魅入ってしまう

 

お揃いのカップに

そっと口を付けて

熱そうに一口ずつ

コクリとコーヒーを飲む姿は

これまた超絶に可愛い!
 
 
 
 
 

 

・・・・今日の夜って言ってたよね?

夜・・・か。

夜・・・・

///////////

 

朝っぱらから、

思い切り不純なことを考え出したところで

タイムアップ!

 

 

ガタンスタンと忙しなく動き回る俺を

カップ越しに見つめる智くん・・・

その上目遣いに再びザワツク俺の心臓・・・

 

あははっ、、、、

節操ないなぁ、俺。

 

 

『・・・・・イヤラシイヤツ』

 

 

 

 「・・・・・・・。」

 

いつの間にか俺の足元に転がっていた

カエル・・・もとい、カズと命名した式

ケケッ と、しけた笑いをしながら

俺の心情を暴露し始めるから

慌ててその口を塞ぐ

 

 

そんな俺たちを

優しい眼差しで見つめる智くんの背後に

麗しき式神が佇む・・・

 

奴が来ると

一瞬で空気が変わる

たしか・・・式は術者の能力に比例する

と、言っていたが…智くんの式はまさに

そんな感じがする

凛とした心地よさと

少しだけ哀愁を帯びた気が漂う

穏やかな中にも厳しさがあって

でも・・・

こんな奴だったっけ?

潤・・・

なんかより一層儚さが増してきた

心なしか・・・透けているような

透明感が半端ない

気のせいか・・・?

 

 

迫る出勤時間、

片足にしがみつくカズと共に

騒がしく言い合いをしながら

仕事に出かけた

 

 

 

 

 

夕方近く仕事がひと段落したところで

タイミングよく智くんから連絡があった

 

 

『お疲れ様!

今、手が離せなくて

悪いんだけど、なんでもいいから

日本酒を一本買ってきて

出来れば翔くんの好みでチョイスして!

じゃぁ、待ってるね~』

 

 

日本酒??

なんだろ?いつもはビールとか

焼酎が多いのに

珍しく日本酒??

 

 

「・・・・なんだろう?今日って何かの記念日?」

 

 

それとも・・・何か依頼者でも来るのか?

そういえば最近めっきりそっち系の仕事依頼が減ってる?

俺が知らないわけはないはずなんだけど

 

 

ブツブツと独り言をつぶやいていると

それまで髪の毛にぶら下がって遊んでいた

カズが意外なことを話してきた

 

 

『・・・シキハジメノヒ、トクベツナヒ』

 

 

「シキハジメ??って何それ」

 

『・・・オマエガ、オレサマニ ナヲツケタヒハ、オレサマノシキハジメ』

 

 

あぁ・・・智くんが潤て名前を付けたんだ

それが今日ってわけか

特別って…どう特別なんだ?

益々謎が深まるが

せっかくのデートのお誘い・・(だよな?)

時間がもったいない!

どんな銘柄にしようかあれこれ想像しては

旨いであろうその味に思いを馳せる!

 

 

願わくば酔いが手伝って

甘い時間が過ごせるようにと

心の片隅でちゃっかり願う

どこまでもちっこい俺であった・・・