それはよく見る光景で
もういい加減に見慣れた光景で
どうってことない日常の一部なのに
 
ふと気を抜くと
それは一気に押し寄せてくる
 
 
 
 
 
 
 
「やんなっちゃう・・・」
 
 
 
 
思わず口にしたその言葉の意味を
わかる奴なんていないわけで
短く一つ息をはき
荷物を片手に部屋を出ようとした時
 
 
満面の笑みを浮かべ
挨拶をしてくる見慣れた光景が
時として俺の神経を逆なでする
 
 
視界の端に見つけた
この上ない幸せそうな顔をした
あの人の思い人が
 
一瞬すまなそうに目を伏せた
 
 
 
 
 
 
 
 
「なんだよそれ・・・・」
 
 
 
久々に荒げた声に周りがざわつく
当然、楽し気に話していた二人も
俺を見つめる・・・・
 
 
・・・ヤメテクレ
 
 
 
・・・イタタマレナイって
こんな感じなんだ
 
 
 
 
 
 
知りたくもなかった
感情は行き場をなくし
超高速で血流にのる
 
今にも沸騰しそうな
血潮を必死に抑えながら
見慣れた光景に背を向けた
 
 
 
まだ・・・ダメなのか
情けない
 
 
 
一瞬でも隣にいる自分を
思い浮かべ、その微笑みを
独占できるのなら
 
儚くとも・・・
俺にとっては何よりもかえがたい
至高の時間となる
 
 
「まだまだ小さいな俺は・・・・」
 
 
 
見慣れた光景が戻る
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
儚さは最高の
美徳
 
 
負け惜しみだろうが
なんだろうが
俺にはそれが似合ってる
 
 
それは俺
 
誰にもまねできない
俺の居場所
 
 
end
 
 
 
 
 
 
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