晩夏・・・

それは特別な響き

 

 

あの人からほぼ慣例と化した

メッセージが届く季節

毎年の定期便・・・・(笑)

 

 

 

 

 

 

 

 

今年は・・・・『夜までのもう』

 

 

文末にそう添えられていた

 

即答したい気持ちを抑え

常に返事を保留にする自分を

あなたはどんな風に思っているのだろう

 

・・・・断わったことは無い

 

それがすべて(笑)

 

保留にするのは・・・

ただほんの少しだけ

あなたより優位に立ちたいから

 

どうせそんな事すら

・・・・・見透かされているのだろうな

 

 

 

その日は、いつもより緊張していた

意を決して挑んだ帰国

幾度も頭の中でシチュエーションを繰り返す

その度に湧き起る確実な疼き

あの人が植え付けていった

あの夏の餞別・・・・

 

誰にも言えない秘密を共有した

ひと夏の夢・・・

 

心の準備もないまま

あなたによって開かれた

自分の中のもう一つの顔

 

憧れだと思っていた

 

だが、あなたに抱かれて初めて

そうじゃ無かったのだと

気づいた

 

嫌じゃ無かったから

むしろ・・・

 

ただ夢中だった

同性だということすら

消し飛んでいたから・・・

 

心の変化に

気づいたはずのあなたからは

何も言ってはこない

まるで夢の中の出来事の様に

 

中途半端な思いのまま日本を離れ

結局、気持ちを伝えることも出来ず

過ごす日々

 

そんなあなたからの定期便に

一喜一憂し

いつしか待ち遠しく思っていたことを

あなたは知らない(笑)

 

 

 

 

 

 

正直

思い出だけじゃ足りないくなっていた

あなたが欲しい

そう思った矢先の誘いに心がざわつく

添付された画像を開くと

あの宿が映し出された

 

もう限界だと思った(笑)

心が決まれば後はつき進むだけ

持ちきれない荷物の量は思いの表れ

それを持ってあなたに会いに行く

会ってあなたを抱きしめる

 

 

 

 

はやる心を抑え

懐かしい玄関に佇む

なにも変わっていないあの時のまま

 

 

 

 

そして・・・奥から顔を出す

あなたは

 

さらに雄々しく

麗しく・・・・すぐにも心をあふれさせる

 

 

 

変わらない声

変わらない…眼差し

 

やばい・・・泣きそう

 

 

前よりも狭く感じる廊下

前よりも更に大きく感じる背中

あぁ・・・やっぱりあなたは

最高だ・・・

 

 

部屋の前で一瞬躊躇するあなた

狭い入り口で入れ替わるように中に入ると

 

あぁ・・・

クスッ

 

 

目に飛び込む

あの日もここから見た風景

 

二つピタリと付けられて敷かれた布団

 

 

この時に、何が起こるか予想し

一歩入った瞬間にそう望んでいたんだ

そして・・・それはきっとあなたも

同じ・・・

 

待たせていたのか、待たされていたのか

もうどうでもよくなっていた

この想いを今夜こそ伝える

 

ラストオーダーのハイボールは

薄めにつくってもらおう(笑)

長い夜にするために

あなたをたくさん感じるために

 

せめて今夜だけは・・・

味わいたい

 

思う存分・・・・・・

 

 

今宵、夢叶うように

最後のグラスをあなたに合わせる

 

中の氷が軽やかに躍った

 

 

 

fin