「サトシ・・・・・どうするのだ？」
結局、翔くんから何も動きがなく
どっぷり薄暗くなった空を見上げて
潤が心配そうに俺を見る
「・・・・・さぁな、どうするのだろうな？」
小さくひとつ息を吐く
「サトシから・・・誘ってみてはどうだ？」
意外な発言に驚いた
俺から誘う・・・
瞬間、脳裏をかすめた言霊・・・
俺の意志は時として
相手の意志をのみ込む
それが嫌で声に出したくないことが
翔くんには増えていく
だが・・・・
「サトシ・・・、言霊とは祝詞のようなもの。人の意志を根本から
操れるものでは無い・・・言葉自体に意味を成し
初めて力が宿る・・・恐れるな」
・・・・言葉にあるとされた呪力は
そうありたいと強く願うほど
形になる・・・・・・
「潤・・・・・・そうだな、それ・・・いい考えだ」
使い方を間違わなければ
全ての人にそれは備わっている力（もの）
特別じゃない・・・んだよな
翔くんの部屋の前に立ち
ノックして見ると
気のない返事が返ってきた
「翔くん、、、入るよ」
ドアを開けると
小さく丸まった背中が目に入る
・・・・・翔くん、相変わらずだな（苦笑）
やけに小さく見える
俺の声がやっと届いたかのように
目をクリクリさせながら
振り向く翔くん
手に持っていたチラシを背中に廻すと
何事もなかったかのように装う
花火・・・・か
「翔くん・・・・今から出掛けようか？」
「へっ？・・・・・」
「ほら、あのリビングにあったチラシ見たからさ」
「・・・・えぇ！！」
「あっ、ゴメン、今更だよな・・・・」
あれ？違ったか？？
翔くんの反応が思っていたのと違う
「智くん違うんだよ・・・！！お、俺が
誘うの、へ、へたくそだから・・・」
シュンとさらに小さくなった肩
クククッ・・・・可愛すぎる
「・・・あぁ、会場には間に合わないけど、行く？」
「・・・・・智くん、」
半べそになりかけた顔
久しぶりに見た気がする（笑）
なんだか・・・・・大勢の中で見るよりも
二人で眺めてもいいかなって
そう思った
花火を知らせる合図が上がる
もうすぐ、花火が上がる
さて・・・こちらも準備しておくか
「・・・・お前も一緒に来るか？」
苦虫つぶした顔がニヤリと笑う
「主のヘタレ具合は天下一品だ、それを見ずしてどうする」
ふふふっ、クエないヤツ
楽しめ・・・
サトシが・・・・喜ぶ気が我らには一番なのだ