玄関のドアを開けるとすぐに智くんと

同じ匂いが俺を出迎えてくれる・・・・・・

異様に高鳴る心臓の鼓動が静まり返ったそこかしこに

反響しているかのように感じた

 

 

左側の棚の上に思わず置いてしまった鍵・・・・

俺の家と同じようなトレーが置いてあったから

隣に並ぶキーケース・・・・・自然と笑みがこぼれてきた

 

薄明りの向こう側で

チラチラと切り替わる光源

テレビ・・・・見ているのかな?

 

確かZERO終わりの番組だと・・・・・

 

ゆっくりと靴を脱ぎ少し湿った足先をできるだけ

つけないようにぎこちなく歩き始める

 

智くんがいるであろう部屋を目指して

静かに近づいていく

 

ん?・・・・・・

ZEROの曲?

 

智くん・・・・・何を見ているんだろう?

 

部屋を覗くとソファー越しに智くんのふわふわの髪の毛と

画面いっぱいに映し出された自分の顔

 

さっき終わった番組がそのまま流れていた

 

・・・・録画、しててくれてるの?

いつも?そうなの?

決まった時間に来るメールも

生放送をみてその後もこうしてみてくれてるの?

 

勝手に都合よく解釈し始めたら

どれもこれも・・・・・そう思えてきて

モヤッとしていたものが

形となって・・・・・・確信に変わっていく

 

 

今日が、始まりなのかもしれない

もし、それが俺の意図しているものと

違っていたとしても・・・・それはそれで一つの区切りになるはず

新しい関係を築けばいいんだ

 

少なくとも・・・・嫌われてはいないのだから

 

 

意を決して智くんの正面に回りこむ

テレビの明かりが智くんの綺麗な顔に深い影を幾つも

作り上げていく・・・・・

長い睫毛にも、通った鼻筋にも、形の良い唇にも、柔らかな頬にも

 

 

どれも・・・・俺の大好きな

 

ずっと見てきた俺だけの・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

起きていたら・・・・・・

 

眠っていたら・・・・・

 

なんてことなんかぶっ飛んでいた

 

 

 

引き寄せられるように・・・・・・

 

唇を合わせていた

 

そっと・・・・・触れるだけの

 

最初で最後かもしれない・・・・・

 

キスを・・・・・・・して・・・いた