あの人の言葉が紡ぎだされる

 

俺の一番欲しかった言葉・・・・・

そしてそれは一番聞きたくなかった言葉でもあった

 

 

 

一言一言かみしめるように話す声が

俺の頭の中で木霊する

最後かもしれないこの声を記憶に留めたくて

 

 

「・・・・この場所と同じくらいに不可欠なのは、」

 

 

言葉が止まる・・・・・

 

 

「お前だ・・・・・翔」

 

 

「・・・・・・・・・・。」

 

 

 

俺の聞き間違いじゃない・・・よね

 

 

「俺の・・・・・傍に・・・・」

 

 

「傍に・・・・・?」

 

 

確かめるためにもう一度その言葉を

 

 

「ずっと・・・・ここにいて欲しい、俺の隣に・・ずっと」

 

 

それは・・・夢にまで見た言葉

そして・・・・聞きたくなかった言葉

 

不思議と冷静な俺がいる

 

断わる理由など見つからない

ずっと望んでいたことだったから

だけど・・・・・

 

誰かに流した泪をずっと掬い続けてきたからわかるんだ

愛を紡いだ時間は消えない

その声で奏でてきた愛の唄は誰かのもの

俺の見てきた 二人の幸せな時間

 

あなたのあふれ出る旋律は誰かのための

悲しいやさしい セレナーデ

 

 

 

 

「・・・・・今の俺には、無理だよ・・・・・」

 

 

「・・・・・翔、」

 

 

不安気な声は似合わない

いつも勝ち誇っていて欲しいから

 

 

「・・・・・・今の俺じゃ、なにもしてあげられない、」

 

 

「・・・・・なにもいらない、そのままでいてくれたらいいんだ」

 

 

わかってないな・・・・

 

 

「そうじゃ無いんだ今のままでいれば、いつか俺は誰かと同じになってしまう」

 

あなたの顔が曇る・・・・

 

「・・・・・一人でもたっていられるようになったら、その時には」

 

最後の言葉は言わせてもらえなかった

 

初めて交わすくちづけは

 

やっぱり甘くて・・・・・

 

どこか切なくて・・・・・

 

とてもやさしい・・・・・・

 

 

ただ触れ合うだけの柔らかな時間が

 

過ぎていった・・・・・・