「・・・・・ハァ~、」
智くん・・・・・
来たわいいけど、どんな顔して会えばいいんだ?
お邪魔・・・虫じゃないよな?
ドアの前に立って聞こえもしない中の様子をうかがう
変質者だなこれじゃ(苦笑)
ガチャッ
ドアノブがゆっくり回り
中から小さな顔が覗く・・・・
「智くん・・・・・・」
ほっと胸をなでおろし一歩近づけば
暗がりでもわかる
二つ並べられた靴
洗いざらしの髪がまだ水分を含んでいる
今、シャワーを浴びたばかりのその姿からは
良からぬことを考えるには十分すぎる状況で
一気に頭の中が真っ白になる
「あっ、ゴ、ゴメン、・・・・俺、やっぱ帰るわ」
「えっ、しょ、翔くん!!!」
駆け出していた・・・・・
なんだ、なんだ、なんだ、なんなんだ!!!
見たくなかった・・・・・
見たくもない物見せつけられて
なんだよ俺って・・・・
アホじゃん
そもそもここに来ていったい何をするつもりだったんだ!
飯を食いに行くのだって智くんが同意した!
部屋に上げるのだって・・・・・同じこと
そこで何があったって
俺が口出しする権利はない・・・・
ないんだ・・・・・
なかなか来ないエレベータに焦れて
何度もボタンを押し続ける
イライラが頂点に達する・・・・・クソッ
「はぁ・・・ぁ、、翔くん!!」
えっ・・・・・
Tシャツにバスタオルを巻いたままの智くんが立っている
履いてる靴もチグハグデで・・・・・
「な、なんで帰っちゃうの?用があったじゃないの?」
エレベーターが開く
降りてくる人がジロジロと智くんを見ていく
まずい・・・
「戻って!、早く!!!」
「翔くん!!!」
「いいから戻れって!!!」
一瞬泣きそうな顔をした智くんが
何かを言いかけて立ち竦む
その姿が・・・・・エレベータのドアで遮られた
何やってんだ・・・・俺
追いかけてきた智くんは・・・・・
なにを言いかけたんだ?
言い訳・・・・か
もうどうだっていいや・・・・・・
疲れた俺・・・
エントランスを抜けると
スマホが点滅していた

