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凍てつく月夜にいつの間にか季節は変わり

あの日、目の前でその姿を俺に見せつけたあの人は


見知らぬ人に添われ消えていった






「潤」からの連絡は・・・・・彼なりの想いのこもったものであろうと

推測した・・・・


きっと俺に見せたくなかったのだろう


あの人の喜ぶ顔を・・・・・


見知らぬ人と見つめ合い微笑む顔を・・・・・


例えそれが本意ではなかったとしても









あの日以来、「潤」とは頻繁に連絡を取り合い


いなくなったあの人を思いだしては二人して遅くまで


語るような仲になっていた


潤にとってもあの人のことを話せる唯一の人間が俺だけなのか


知り合ってから今までのことを話して聞かせてくれた




苦労・・・・していたんだな


「潤」の容姿には似つかわしくない煙草を咥え


まずそうに吸う姿にはいまだに慣れないでいる



煙草をもみ消しすぐにまた箱から取りだす手を掴む



「もう・・・やめとけ、吸いすぎだ・・・・・」



「・・・・・フンッ、あんたまで、サトシと同じことを言うんだな・・・」



「俺じゃなくたって、それだけ不味そうに吸われたらいい加減止めるだろう(苦笑)」



「潤」からその煙草を取り上げ火をつけた



紫いろの煙がゆらゆら月夜に向かって立ち昇る



月夜は・・・・あなたの面影を思いださせる


幸せでいればいい


ただ・・・・それだけを願っている


あの・・・綺麗な声と


涼し気な微笑みが絶えることなく


あなたから溢れることを願っている・・・・・

 

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「なぁ・・・・潤、あの人はどこにいるんだろうな」



「・・・・・さぁね、知ってどうする気?」



「・・・・・笑っているといいな、」



しばらく沈黙したまま、煙草をぎりぎりまで吸い尽くし


最後に大きく吸い込むとため息と共にはき出した



隣にいた「潤」が後ろに回り背中合わせに俺に体重をかける



「・・・・・・ねぇ、あんたのこと「翔」って呼んでもいい?」



・・・・・・・そう言えば、出会ってから一度も呼ばれたことがなかったかもしれない


今さら?そう思ったが・・・・



「潤」は・・・・あの人がいなくなった穴を俺でうめようとしているのか


強がってはいるが・・・・寂しいのだろうな




「・・・・・あぁ、好きにしたらいい(笑)」



月夜は人の心を素直にさせるのか・・・


「潤」のはにかんだ笑みが雲間から漏れる月光に映しだされる
 

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悔しいが・・・・俺の知らないあの人との時間を過ごしてきただけあって


雰囲気が一瞬、似ているように感じた





俺も・・・・いつかあなたを名前で呼ぶことが出来るのだろうか?


サトシ・・・・・・と







 

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