・・・・・静かだな
雨音しか聞こえない
描きかけの画を手にとり鉛筆のこすれる音を聞きながら
ふと、その手を止める
今日は・・・勤労感謝の日か
働きづめの翔くんは今日も仕事
身体こわさないといいけど・・・・・
久しぶりに静かな朝を迎える
テーブルに並んで置いてあるカップを手にとり
しげしげと眺め
いつも座っている椅子に腰を掛け
翔くん目線で部屋を見てみる
へぇ~・・・俺と逆の景色だ
しばらくボーっとしていると
俺の式・・・ジュンが声をかけてきた
『サトシ・・・手持無沙汰なのかい?』
「・・・・なに?その含んだ言いぐさ」
『いや、特に意味は無い(笑)』
「・・・・気にいらないなぁ・・・なんだよ」
『では・・・一句・・・』
****** わけもなく淋しきひと日神の留守
※橘沙希 月の雫より******
ジュンが意味ありげに微笑み
宿り木に戻る・・・・
・・・・・・・。
ふんっ、余計なお世話だ・・・ジュン
感情表現の豊かな式になったこと・・・
どこで俳句なんか覚えてきたんだ?(笑)
割と早い時間から自分一人になっていた俺・・・
いろいろとやる事を考えていたのだが
どれも中途半端になって・・・手につかない
描きかけの画を手にとっても・・・
このありさま・・・
珍しいこともあるものだ
ジュンが出てくるのも頷ける(苦笑)
・・・・さみしきひとじつ かみのるす
か・・・・・
翔くん・・・・
なんだか、つまらない
君のいない空間は色がない
同じ日常を過ごしているつもりでも
日々・・・変わっている感情
こうして・・・実感する時間がもてるなんて
思いもしなかったよ(笑)
翔くんは・・・すごいなぁ
俺にたくさんの初めてを持ってくる
どれも・・・楽しくて
そしてどれも・・・少しだけ甘酸っぱい
一人でいたときが
思い出せないくらいに
今が楽しくて仕方ない
今日は・・・日ごろの労をねぎらって
翔くんの大好きな焼肉にでもしてみようかな?
よろこんで頬張る姿を思いだしては
温かい風が心をくすぐる・・・・
冬の足音はもうすぐそこまで来ている
今年の冬は・・・・
きっと寒くないのだろうな・・・・
少し早い夕餉の支度を始めようと
台所に向かう・・・
その様子を見ていた・・・ジュン
『・・・・神の力は偉大なり・・・ふふふっ、はははっ』
これもまた珍しく・・・大声で笑う
・・・・何とでも言え
思うことは自由さ、
言葉に出せないもどかしさはあるにしても
今はこれでいいんだ
翔くんのくれる初めてをたくさん集める
きっと毎日が楽しくなるのだろうな(笑)
「さて・・・・始めるか、」
「神」の帰宅を心待ちにしている自分・・・
こんな気持ちも・・・初めてなんだ
不思議な人だよ・・・翔くん、君って・・・・
雨音とともに奏でる
鼻歌が・・・・耳に心地よく響いていた





