もう一度 始める・・・・・



そんなの・・・・無理だよ









「翔・・・くん」



「うん・・・」



「長い間・・・・ゴメン・・・こんな約束に・・・」



「・・・・こんな、じゃないから(笑)。大切な約束だよ」



「・・・・・ん・・・」



「智くん?」



「あり・・がとう・・・。嬉しかったよ・・・」



「うん・・・俺もこれてよかったよ・・・居てくれて、ここに来てくれて

ありがとう・・・智くん・・・」




翔くんは・・・バカが付くくらい真っ直ぐで

昔とちっとも変らなくて

でも・・・・過ごしてきた日々は全然違っていて

俺は過去にとらわれたまま

翔くんは・・・・・前を向き始めている



だから俺はその邪魔になってはいけないんだ






翔・・・・


好きだよずっと好きだったんだ


誰よりも好きだった


だから・・・・解放してあげる


俺から・・・・














「・・・・・智くん?」





ふわりと腕を絡ませ俺を引き寄せると


優しい顔の奥に見える哀し気な瞳で俺に微笑む


そのまま重ねられた唇が・・・・




やけに冷たくて


ただ・・・温めてあげたいと思っていた






何度もキスをした


触れるだけの冷たい唇が


熱を持ち始めたころ








「・・・・・翔くんを・・・・俺にくれる?」



「・・・智くん・・・・いいの・・・?」



「う・・ん・・・。先に・・・シャワー使って・・・」




恥じらうように顔を反らして


俺からそっとはなれる身体を


もう一度抱きしめる


離したくなかった・・・・・


またどこかに行ってしまいそうで


・・・・・怖かった





「このままでもいいけど・・・?」



「・・・・ダメ・・・行ってきて・・・ねっ・・」


ふわりと笑ったその顔が昔のままだったから


安心した俺は・・・・


掴んだ手を離した







シャワーを浴びながら


智くんのことを思い返していた


頑なに拒んでいるように見えた智くんが


俺を急に受け入れたのに違和感を覚えたから




智くんの心は確かに俺に向かっていた


同じことを思い続けてきたことだけは

言葉にしなくとも伝わってきた


ならば、なぜこんなにも不安になるのだろう・・・・




智くん・・・・



あの時の・・・笑顔は本物だった


昔と変わらない優しい笑顔・・・・





ダメだ・・・考えだしたらきりがなく


すぐにでも智くんをこの手にしたくて


バスルームを飛び出していた・・・・・