どの位経ったのだろ・・・
時間にしたらほんの僅かだったのかもしれない
それでも・・・・触れた温もりは
想像以上で・・・・
心乱れる
翔くんは・・・・俺を拒まなかった
どうしてそんなことをしたのかは
今となってはもうどうでもいい
目の前の翔くんが欲しかった
嫌われてしまってもいいから
抱きしめたかった
ゆっくりと翔くんの背中に腕をまわす
指先が触れるか触れないかのところで
先に背中に廻された翔くんの腕が力強く
俺の身体を引き寄せる
「・・・・あっ、」
密着する身体からトクトクと脈を打つ鼓動が伝わる
「智くん・・・」
一度は偶然触れた唇に
今度は意志を持った温もりが重なった
・・・・・・翔・・・くん?
「んっ・・・・ンフッ」
背中から翔くんの戸惑いは感じられない
唇からも熱い想い以外は感じられない
翔くん・・・・俺は翔くんに
応えてもいいの?
翔くんの顔をじっと見つめる
翔くんの背中に廻した腕に力を込める
翔くん・・・・・
ずっと思い描いていた
欲しかった翔くんの温もりを
今この手にできた
これでもう・・・・
思い残すことはない
この感触をずっと忘れない
ずっと・・・・
こんな俺に触れてくれただけで
十分だ・・・・
翔くん・・・・
ありがと
バイバイ
今までの大切にしてきた想いを
全て翔くんに渡すから
翔くんの頬に手を添え
大好きな唇を記憶にとどめる
少し驚いた様子の翔くん・・・
だけどすぐにとろけるような瞳で
俺を見る・・・・
俺の大好きなまん丸の瞳に
俺が映る・・・・
首に腕を絡ませ深く長い口づけを交わす
翔くんはずっと優しく腰に背中に
手を添えて
俺を受け入れてくれた
溢れだす想いは留まる事なく
総べて流れ込むように
翔くんへと注がれる
思いを寄せた人と交わすくちづけは
なんて・・・・甘いのだろう
後悔しかなかった
自分を・・・・許せなかった
こんなに甘美なkissは
きっともう味わえないだろう
最初で最後のその甘さを
身体に記憶する
翔くん・・・・・
「好きだった・・・翔くんが・・・ずっと」
それが合図となって
二人を現実につきかえす
ゆっくりと翔くんから離れていく
翔くんはただ黙ったまま
ほんの一瞬でも淡い期待をした自分を
閉じ込める
「・・・・ゴメン・・・・もう行くね」
湧きだす感情が一気に涙腺にたまる
見られないように足早にその場をあとにしようと
ドアに手をかけた・・・・
