スズラン
純潔・純粋・・・・・
幸せが訪れる・・・・・・・
智くん・・・・・・
・・・・・・・翔くん
智くんが誰かと特別な関係を持っていると
聞いたのはつい最近のことだった
相手は・・・・誰なのか
幸せなのか?
その人を愛しているのか?
聞きたいことは山ほどあった
だが、俺にはそんな資格もない
俺が智くんの特別になれなかったことが
今はただ・・・・悔しかった
俺の錯覚でなければ
智くんは俺を必要としていてくれた
俺もそれがわかるから
だから、ずっと隣で・・・・・・
違う、俺が智くんを必要としていたんだ
智くんは変わらず俺だけを見ていてくれると
信じていたから
特別な感情を伝えなくても
一緒にいられることに安心していた
その結果が・・・・これだ、
智くんが選んだのは
俺では無い別の人
・・・・信じられなかった
笑わなくなった智くん・・・・
俺の隣で眩しい笑顔を振りまいていたころの
智くんに・・・・・・会いたい
このままその人と
笑わないような関係が続くのなら
俺は・・・・智くんをその人から奪う
伝えられなかった想いとともに
毒を吐きだす
だから・・・・笑って
俺の前だけでもいいから
智くんを傷つけてしまう前に
笑って・・・・・
帰り支度をする智くんを見つめて
そんなことを考えていた
流れるような所作が綺麗で・・・・
思わず見とれてしまう
智くんより先に帰る気にもなれず
ワザと時間を調整していた
時折動きを止めて何かを考え込んでいる智くん
・・・・・この後待ち合わせでもしているのか
しきりに時間を気にし始める
見えない相手に腹立たしさを覚え
智くんを見送ることを諦め
人気のいなくなった楽屋を後に
先に帰ることにした
「・・・・・お疲れ様、智くん、」
そう声をかけて横を通り過ぎようとしたとき
「翔くん・・・」
とても・・・・
とても小さな声で俺を呼ぶ声がした
立ち止まり、振り向くと
不安気に俺を見る智くんの姿があった
「・・・・智くん?」
「・・・・あ、・・・・・・。」
何かを言おうとしているが言葉をのみこみ
俯いてしまった智くん・・・・・
「・・・・智くん、どう・・した?」
今にも抱きしめてしまいそうな感情を押し殺し
声をかける
それでも、うつむいたままの智くん
そんな智くんを
覗き込むように近づき様子を探ろうとしたとき
急に面を上げた智くんの鼻先が俺の唇に触れた
いや、・・・・・鼻先じゃない
唇が・・・・触れていた
それは一瞬のような、長い時間のような
時が止まった瞬間
離れることもせずお互いの瞳にその姿を
映し込んでいた・・・・・
周りの音は消え
自分の鼓動と智くんの鼓動だけが
同じ速さでリズムを刻む
普段の何倍もの速さで・・・・・
・・・・・・智くん
俺・・・・もう
