智くん・・・・

翔ちゃん・・・・


「潤!」
「松潤!」


ふふっ、振り向くタイミングピッタリだね

怪訝な顔の二人はさておき
しれっと下手な言い訳をしてみる(笑)

「あぁ、まずかった?どうせなら多いほうがいいかと思って・・・」

無言のままテーブルに視線を落とす翔さん・・・




リーダーは・・・そんな翔さんをずっと見つめている

「あぁ~俺もう喉カラッカラ、リーダーもビールでいい?」

「あっ、うん」





四角いテーブルの一辺ずつに座り、いわゆる「気まずい」


雰囲気のなかあえて俺は場を乱す


「翔さんの事待ってたみたいだったから・・・リーダー」



チラッと翔さんを見て、キッと俺をにらみつける(苦笑)


「・・・待ってたって?」


「俺等が帰るまでずっといそうだったから、どうしたの?って

聞いてみたら・・・翔さんまだ仕事かな?何て言ってるから

とっくに帰ったって伝えたら・・・背中丸めて

寂しそうにしてたもんで・・・・

なにか話でもあったんじゃないかって思って、で、翔さん誘ってみた」



「ばっ、違うって寂しそうになんかしてないって!ただ俺は

翔ちゃんが最近笑わないなって・・・心配になってただけだって・・・」


智くん・・・・


真っ赤な顔をして一生懸命に言い訳している姿が

愛おしくて・・・思わずその頬に手を伸ばしそうになる




グッとこぶしを握りその騒動を抑え込む・・・・



残ったビールをいっきに飲み干し

一つ大きく息を吐く


「飲もっか!!ビール追加!!」

いい加減、腹くくれ俺!!



それからとりとめのない話を暫く3人で楽しむ

正確には・・・楽しむ振りをする


心ここにあらずで

チラチラと智くんを見つめては目が合うたび

そっとそらす・・・

まっすぐな瞳は・・・今の俺には眩しすぎる

直視できない


きっと不思議に思っていることだろうな

智くん・・・・


「あぁ、ちょっとトイレ行ってくる」


そう言ってその場を離れようとする松潤に

俺はすがるような視線を送る


それを見越したのか、小声で


「翔さん・・・逃げんなよ!」

と、囁きながら店の奥に消えた



「・・・・・・・。」


「・・・・・・・。」


沈黙を破って

チビチビと日本酒を呑みだした智くん・・・




普段なら外では飲み過ぎないはずなのに

今日はかなりのペースで酒が進んでいる

しかも・・・ほろ酔いを越している気がした


「翔ちゃん・・・・」



トクンッ・・・

ざわつく心臓




視線を上げて智くんを見る


智くんもゆっくりその瞳を俺に向ける




トクンットクンッ・・・・

震えるように脈打つ心臓




「翔ちゃん・・・笑えよ、笑った顔が俺は見たい」




ドクンッ・・・・

求めだし暴走しそうになる心臓



智くん・・・・もうそれ以上話さないで



「俺は・・・翔ちゃんの役に立ちたい、なんか悩みがあるなら

話して・・・聞くことぐらいなら出来るから」



・・・・・智くん


ダメだ!

これ以上そばにいたら俺は・・・・



その唇で俺の名前を呼ばないで

その瞳で俺を見つめないで

俺の想いは堰を切ってあなたに溢れだしてしまう



「・・・・智くん、悩みなんてないから(苦笑)大丈夫!

笑っているよ、いつだって

智くんこそ・・・身体無理しないで」



智くんに気づかれないように精一杯の笑顔で応える



「翔・・・くん?」





お願いだから・・・そんな顔で

俺をミナイデ・・・・

心配そうに俺の顔を覗き込む智くんから逃げるように

酒をたのみ、呑みつづけていた


いくら飲んでも酔うことすらできない

現実逃避をしたくったって

それすら出来ない自分がもどかしく

早くこの場を離れたかった・・・・


ゴメン・・・俺やっぱり

智くんを消すことなんて出来ない

出来ないよ・・・・




俺は・・・どうすりゃいんだ


気づけば・・・熱いものが頬を伝っていた