大野さんの退院が決まり
午後入りの俺が迎えに行くことになった
ほぼ毎日通っていたニノには負けるけど
これでも時間の許す限り顔を見に行っていたんだから
健気なもんだと、自分でも思う・・・

翔さんは・・・あれから会いに来たのだろうか?

何度か仕事で絡んではいたが
一人きりになることがないくらい
周りにスタッフが張り付いていて
声をかけることも出来ないことが多くなった

事務所の指示・・・・?

キャスターの・・・・イメージがそれほど事務方には
大事なのかね?
「櫻井翔」である必要はないってこと?
嵐の櫻井が欲しいの?



時々俺もわからなくなる事がある
個人として認めてもらっているわけではない事実に
ジャニーズとして、嵐としての付加価値がそこに存在していることに
俺は、俺なのに
周りは嵐の松本潤を欲する


かと言って・・・一人になる気もない俺は
自分も結局「嵐」と言うくくりに
しがみついてるにすぎないんだけどね
それだけ・・・特別な存在だってことか・・・

だから、慎重すぎるくらいプライベートも管理される
仕方ないといえばそれまでだが・・・・



病室に行くと帰り支度を終えた大野さんが
ベットに腰かけて俺を待ってた

「潤・・・悪いね、迎えまで頼んじゃって」

「いや、気にしないでよ、好きでやってるんだから」

「ふふっ・・・ニノと同じことを言う」

潤・・・・そう、あれから大野さんは俺をそう呼ぶようになった
なぜかはわからないが・・・
呼ばれて悪い気はしない
むしろ・・・嬉しい

それと・・・翔さんの名前を口にするとき

「翔くん」ではなく「翔ちゃん」になっていることも
気になった

俺は思いきって聞いてみることにした

「ねぇ、翔さん・・・来た?お見舞いに」

「ん?来ないよ、俺が来るなって言っといたから(笑)」

「えっ?連絡あったの?いつ?」

「・・・・・なんだよ、連絡くらいするだろ?普通、翔ちゃんは忙しいから
来なくていいよってメールしたんだよ、本当はお前らにだって送りたかったけど
色々頼むのに他の人じゃ・・・ってマネージャーが言うからさ」


「翔さん・・・心配してたよすごく、会いに来れないってぼやいてた・・・」

俺はとっさに嘘をつく


「そうなんだよ、皆も大げさ、翔ちゃんは昔っから変わらないねぇ、心配性なところは(笑)」

大野さん?・・・・・

「ねぇ、あのさ・・・今日これから帰るんだけど、どっちに送ればいい?」

敢えて聞いてみる。
お願いだ・・・・翔さんの家だって言ってくれ!

「どっち?・・・なんだよどっちって、俺ん家は何軒もないぞ(笑)」

大野さん・・・・・あんた、まさか!

 


翔さんとの事・・・もしかして記憶がない?
翔さんは、このことを知ってる?
いや・・・多分知らないだろう・・・

どうする?翔さんに会ったとき
どう動く?
大野さんの時間は戻るのか?

「潤?どした?」

不安そうに顔を覗き込む大野さんに

余計な心配かけ無いように平静を装う

「ううん、何でもないちょっと聞いただけ、で、鍵は俺が預かってたから」

「ぅえ?なんで潤が持ってるの?」

「えっ?あぁ、あれだ、事故の時持ち物預かってたから全部」

「あぁ、そうなんだ、ごめん色々迷惑かけちゃって・・・・」

「いや、いいんだ、急なことだったから仕方ないよね」


まさか…今の状況で翔さんが家に来た時にあずかってたなんって
言ったって理解しないだろう・・・きっと

「でもさ・・・俺、なんで潤の家に行ったんだろうな・・・

酒飲んでたのか?記憶がないんだよ・・・それに・・・誰かを探していたような気がする」


・・・・・・やっぱり
そうなんだ、そこから抜けてるんだ全部・・・・・
一番辛いことが封印された・・・のか?

ぼんやり窓の外を見ている大野さんの顔は
俺の家に来た時のようなどこか切なげな表情になっていた

 

 

 

 
 

 

 

大野さん・・・・