あれから毎日時間が空けば大野さんのところに通った
日ごとに柔らかくなる面差しに安心する

ただ、大野さんの口から翔さんの名前が
一度も出ないことに不信感を覚えたが
敢えて触れないでいた

「ニノ・・・もういいよ(笑)毎日来なくても、もうすぐ退院するし」

「いいんですよ、好きで来てるんだから。ゲームしてるだけだし」

「ふふっ・・・ゲームオーバーしてるの気づかなくても?」

「い、いいんですって、羽のばしてるの!(照)」

時々、鋭いんだよね、この人・・・見ていないようでしっかり見られてる

「・・・・ねぇ、ニノ」

「はい?どうしました?」

珍しく甘えた声・・・久しぶりに聞くこの声のトーン

「俺って・・・・だれか好きな人いた?」

えっ・・・・大野さん?


 
  

「ここに来てから・・・夢ばかり見るの。顔がね・・・ないんだその人」

遠い目をしてその面影を追っているのか
切ない顔してる・・・・

「えっ・・・と、その人って・・・どんな人なの?夢に出てくる人」

「ん~・・・多分男の人なのかな?ありえないんだけどね(笑)」

あり得ないって・・・・

翔さんとの事は?・・・・

「ごめん、やっぱいいや、変なこと聞いて悪かった。忘れて」

 
 


大野さん・・・まさか・・・

翔さんとの事覚えてないの?

翔さんマジで
あれから一度も会いに来て無いの?

「・・・・ねぇ、大野さん、翔さん・・・ここに来た?」

「ん?・・・翔ちゃんは、今忙しいんだろ?だから来なくていいっていっといた」

翔ちゃん?・・・・来なくていい?

「・・・・連絡はとってたの?」

「一度メールが来たかな・・・・その時にそう返した」

大野さん?・・・・・

「会いたいって思わない?翔さんだけ来て無いんだよ?
おかしいと思わない?」

「??ニノどうしたの?忙しいんだから仕方ないだろ?
それに退院したらまた一緒に仕事するんだしすぐ会えるだろ?」

「そうじゃなくて・・・・!」

「二ノ??なに怒ってるの?変な奴(笑)」


大野さん、あんたの好きな人は!
そう喉まで出かかった言葉を飲み込む・・・・

会えば・・・翔さんの顔を見て声を聴けば
思い出すんじゃないかって
思ったから・・・・・

記憶が・・・ないわけじゃなさそうだし
でも・・・・
俺なら、やりきれないかも・・・

翔さんは・・・これが本当なら
受け入れられるのだろうか?



 
大野さんの中に翔さんがいない事実を・・・
たぶん・・・・・・
二人で過ごした時間だけが抜け落ちている・・・・