「・・・・・おはよう」
あれ?
一番乗りか、珍しく翔くんがいない・・・
いつもなら、窓際の椅子で新聞読んでるのに
難しい顔して・・・んふふっ、
そんな顔もイケメンなんだけどね
今日は翔くんの隣に行くつもり・・・
翔くんの隣に行くのすっごい久しぶりな気がする
いつも忙しくしてるから話しかけづらいって
言うのもあったけど、なんとなく
行かなくなってたなぁ
そんなこと考えたこともなかったけど
若いころは隣って言えば翔くんだったもんね
なんだかんだ言って楽しかった
いつ頃からかな・・・
そこにいることが
当たりまえじゃなくなったのって
・・・・となりに行くのに
考えて行くことなんてなかったな・・・
なんか俺ここ何日か
すごく頭使ってる気がする
いろんなこと考えてて
疲れた・・・
夜とかも気が付くと次の日になってるし
あんま、寝て無いかも
・・・早くこないかな翔くん
話すこといっぱいあるのに
「うぅーーっす」
楽屋に入った途端、
ソファーで横になっている智くんが
俺の目に飛び込んできた
動かないところを見ると
眠ってる?
いつからいるんだ?
いつもより集合時間遅かったのに
連絡行ってなかったとか?
・・・しかし、気持ちよさそうに寝てるなぁ
まぁ、いつものことだけど(笑)
私服のまま眠っている智くんは
少し薄着だったせいか身体を縮こまらせていた
さすがにまだ室内とはいえ肌寒い季節だから
俺の上着をそっと掛け頭側に腰を下ろす
寝顔・・・・久々に見たな
あどけない可愛い寝顔
この年でここまで寝顔の可愛いアイドルって
いる?ってくらいに可愛い・・・
ほっぺたが、こぼれ落ちそうだ
プヨプヨで柔らかそう
思わず手を伸ばしそうになる
そっと頬に触れてしまいたくなる
昔からどこでも、平気で寝てしまう智くんを
思い出していた
この人にはベッドや布団は無意味!とすら
思ったほど場所を選ばない
放って置いたら立ってでも寝てしまいそうだから
困ったものだ(苦笑)・・・
動じない精神はここから生まれてきたのだろうか?
俺だけが知っている智くんはほんの何年間かだけ
それだけでも俺にとっては貴重なんだ
誰にも教えたくない
あの頃のほうが自然に触れ合えた
そんな気もする
純粋な心のままでいられた
俺と智くんだったのだろう
・・・・何卑屈になってるんだ、俺
静かな空間に二人だけの時間
もうすぐみんな来る・・・・
このままどこかに連れ去ってしまいたい
誰も来ない処で智くんと二人、過ごせるのなら
どんなにか・・・だが叶わぬ夢・・・か
そう思うとたまらなく
欲しくなる・・・・
智くん・・・
まだセットもしていない洗いざらしの柔らかな
髪の毛をそっとかき分けて
額にkissをした
「智くん・・・ごめん」
起こさないように静かに立ち上がり
いつもの定位置に座る
穏やかな時間の終わりを告げる
賑やかな足音と話し声が
遠くで聞こえてきた
俺の想いはどこに行くのだろうな・・・
そのまま視線を新聞に落としたが
文字が滲んでよく見えなくなっていた