それぞれの女性が生涯に持つ卵子の数に大きな差はありませんが、卵子の在庫量の多さは自然妊娠、体外受精の成功率に大きく影響します。女性は生まれた時からおよそ100万個の卵母細胞を備えていて、思春期が始まり毎月の月経時に10~15個の卵胞が呼び出されますが、体内のホルモンだけでは1~2個の卵子を成熟、排出させることしかできません。その他の卵子が淘汰されることにより、全体の卵子の在庫量はだんだんと減っていきます。
 


自分の卵子の在庫量はどれくらいか、どう知る?

卵巣の前胞状卵胞の顆粒膜細胞から抗ミュラー管ホルモン(ANTI-MÜLLERIAN HORMONE, AMH)と呼ばれるホルモンが分泌されています。AMHの数値により卵巣中の卵子の在庫量(OVARIAN RESERVE)を予測できるため、卵巣機能を評価することができます。このようにして個人の卵巣の状況を知ることができるのです。
 


AMH数値の意味は?

自分の体の中にはあとどれくらいの卵子があるのか興味がある、自分の生育能力を知りたいなど、卵巣機能は多くの女性にとって気になる点だと思います。AMHは簡単な血液検査です。当院では約1時間で結果をアプリ上で知ることができるので、精度が高く手軽な検査と言えるでしょう。AMHの数値が高ければ、それは卵子の在庫量が多い、つまり毎月、排卵予備軍としての卵胞数が多いことを意味します。反対に、AMHの数値が低いと卵巣機能の衰退、毎月呼びだされる卵胞の数は少ないと予測されます。凍結卵子や体外受精などの治療を受ける場合、AMHが高い方たちの方が、排卵誘発剤などの刺激により得られる卵胞の数が多いということになります。

 

 


下の図ではAMH数値と同年齢を見比べ、自分がどのあたりに位置するか、卵巣年齢を推算し、今後の家族計画の参考にすることができます。

 


あなたの卵巣年齢は?AMHの結果はどう見る??

AMHが正常なら心配無用??

AMHは年齢とともに下降しますが、それ以外にも生活が不規則だったり、運動不足、卵巣の手術などにより影響を受けます。AMHは上昇に転じることはありません。検査をすることで、早く自分の卵子の在庫量を知り、早く準備をすることができます。

AMHが低い場合、どうすればいい?

卵巣機能は時間に逆らい「若返る」ことはできません。しかし定期的に検査をすることで、今の生殖能力を把握し、それにあった対策をとることができます。

 

 

 

 

 

 

卵子の数を変えることはできません。なので質で勝負しましょう!「いい卵子」を育てることはとても大事です。
私たちにできること:

  1. 運動:運動333ルール。毎回最低30分、毎週最低3回、毎回運動後の心拍が1分間に130回以上。血液の循環が良くなり、卵子をより健康に。
     
  2. 規則正しい生活:卵子の発育状況、成熟度は体内のホルモンに関係するので、十分な睡眠をとることで、正常にホルモンが分泌され卵胞が育つことにつながります。
     
  3. 水分、栄養バランスのとれた食事:毎日2000ccの水分をとり、体内の新陳代謝を促進させます。身体の機能を正常に保つため、現代人の食生活では、野菜・果物などビタミンを多く含んだ食べ物や、ミネラル・抗酸化成分のある食材など、いろいろな物をバランスよく摂取するとよいでしょう。

 


その他にも、より積極的に卵子凍結や体外受精を早めに始めるなど、将来の自分のためにできることもあります。
治療には排卵誘発剤を使用しますが、AMHが2以下の方の場合は主に低刺激、自然周期に四少治療(少ない採血、少ない注射、少ない超音波検査、少ない再診)を併せた、忙しい現代女性の生活リズムにより合った治療を提案しているほか、当院では「二段階採卵法」という独特な治療法もあります。
これは同じ周期に二度の採卵手術を行い、時間を節約できるだけでなく費用も節約することができる方法です。
 


以前より早期閉経になる若い方が増えています。
定期的にAMHを検査することにより、卵子の在庫量の変化を知ることはとても大事です。毎年、自分を守るための子宮頸がん検査を受けるとき、自分の生育能力を守ることも忘れないでください。