こんにちは、コウノトリ生殖医療センターです照れ

免疫ママシリーズ第二弾!

当院医院長、頼医師によるコラムのご紹介です。

10月に入国制限が緩和され、当院で初診・移植を受けられたほぼ全員が受けられている「ハイレベル免疫検査」。

これを受けることにより、どんなことが分かるのか、どんな対処をしていくのか...

なかなか妊娠に至らない方は特に必見です!指差し

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今回ご紹介する女性も「免疫ママ」のひとり。彼女の免疫反応による胚盤胞への攻撃は、最も強力な薬剤を使用してやっとコントロールできるレベルでした。コウノトリが毎年数百人お会いする「免疫ママ」たちの中でも、こうしたケースは少数で、勇気あるママ・趙小僑さんのケースをも超える難易度です。

 

 

必ず原因がある!「胚盤胞の経過観察」で免疫攻撃の原因を探る

 

流産を何回まで受け入れられますか?2年で4度の流産を経験したら?

 

彼女は2年の間に4度にわたる流産を経験し、そのうち2回は組織の染色体検査の結果、正常であることが確認されました。なぜ4回とも正確な移植を行ったにもかかわらず、毎回うまくいかないのでしょうか?

こうした結果の背景には必ず原因があります。何としてでも免疫攻撃の原因を突き止めなければ、ママになるという彼女の夢は今年も叶いません。複数回の移植失敗・反復性流産・染色体は正常であるにもかかわらずうまくいかない。これらの原因は何なのでしょうか。

 

原因を突き止めるために、胚盤胞の経過観察を行い、胚盤胞がいつ攻撃を受けているのかを明確にしていきます。まずはその仕組みから説明し、実際のケースについて説明します。

 

胚盤胞の経過

 

移植後1週目、2週目、心拍確認ができるまでの間に最も多くみられるのが「浅い着床」です。また枯死卵という、超音波では胎嚢が確認できるものの、心拍の確認ができないケースもあります。これらは「特殊検査」・「ハイレベル免疫検査」を用いて検査していきます。私たちはこれを「3回の採血確認」と呼び、これにより、免疫攻撃の原因を特定していきます。

代表的な原因:血栓姉妹、白血球、腫瘍壊死因子、NK細胞、B細胞

 

そして、原因と思われるものを見つけたのち、それぞれの原因に適した方法で立ち向かいます。通常、免疫専門医は状況に合わせて段階分けをした薬剤を処方します。「第一段階」の薬で効果が見られない場合は、「第二段階」の薬剤を使用、「第二段階」でも効果が見られない場合は「第三段階」の薬剤を使用します。免疫攻撃が重度であるとされる場合、最大で4回の薬剤の変更・調整が必要になります。しかし、移植可能な胚盤胞がたくさんあるわけでもなく、「第二段階」以上の高価なバイオ薬剤は経済的負担も大きくなります。どうすればいいのでしょう?

 

「3回の採血検査」で免疫ママを救う!

1回目の移植は浅い着床、2回目の移植は枯死卵(染色体異常なし)、3回目の移植はまたもや浅い着床でした。これら3回の移植は「第1段階」の薬剤のみを使用、また、良好な胚盤胞をすべて使用してしまいました。そのため、4回目の移植では卵子提供を受けることにし、2つの胚盤胞移植と「第3段階」の薬剤を使用することにしました。これら4回の移植に際しては、ERA検査も行い、正確な移植を行いましたが、4回目の移植も萎縮性胎嚢という結果でした。

 

この4回目の移植ではIVIG(免疫グロブリン)・ヒュミラ(高額なバイオ薬剤)を使用し、治療にかかった費用は20万台湾ドル(日本円で約90万円)を超えました。成功には結びつかなかったものの、新たに明らかになったことがありました。それは、移植後2回目の採血検査でB細胞は26、白血球は15,900、腫瘍壊死因子は43.8まで上昇していたことです。これらの数値は5回目の移植時にとても役立ちます。

 

コウノトリ生殖医療センターがはじめた「3回の採血確認」は、彼女の4回の移植のなかで胚盤胞を攻撃をする原因を探し出す手助けとなりました。これらデータをもとに、5回目の移植を行う2か月半前から「莫須瘤」の使用を始めました。B細胞、白血球のコントロールに効果があり、そこに4回目の移植時にも使用した薬剤を加えました。そしてついに女の子を授かることができたのです。「免疫治療フルコース」、「3回の採血確認」を経て誕生した、待望の赤ちゃんです。

 

2020年に発表した「会いたい!反復着床不全の後で(1)」内で紹介した2人の女性たちは、中度免疫の問題を「第3段階」の薬剤を使用することで解決してきました。そしてママになりました。

 

しかし今回紹介した女性のの免疫反応は、最も強力な薬剤を使用してやっとコントロールできるレベルの重症度。コウノトリが毎年数百人お会いする「免疫ママ」の中でも少数のケースで、勇気あるママ・趙小僑さんのケースをも超える難易度でした。

 

1.4回にわたる移植の経過:

 

 

2. 4回目の移植によって得られた貴重な情報

 

3. なぜ薬剤を使用していない2回目の移植と、高価なバイオ薬剤を使用した4回目の移植の結果が同じなのか?

通常、免疫攻撃は流産の回数と比例します。もし4回目の移植でIVIG(免疫グロブリン)とヒュミラを使用しない場合、おそらく「浅い着床」となったでしょう。4回目の移植で第三段階の薬剤を使用した際、萎縮性胎嚢という結果になってしまいましたが、主な原因であるB細胞に対しては、第4段階もしくは第5段階の薬剤を使用することで、ようやくはっきりとした効果が現れます。

 

 

4. 5回目の移植後7日目 免疫反応の検査結果:

以下のNK細胞の数値から、IVIGを投与しなくても妊娠の維持が可能であることが推測できる。

 

 

5. もし移植後に胚盤胞の成長速度に遅れが見られる場合、胚盤胞を守り抜けるの?

2022年に私たちが生み出した「着床期救命理論(Implanted-Blastocyst Rescue)」は、すでに十数人の赤ちゃんを救い出すことに成功しています。ぜひ「急!「救」是想見你(3)著床期急救(IBR)」(親愛的!她把我們的胚胎救回來了)」(日本語版は近日公開予定)もご覧ください。