こんにちは。

コウノトリ生殖医療センターです。

 

今回は、当院生殖医療専門スタッフEricによる卵巣反応不良の分類と治療策についての文章をお伝えします。

 

 

   Eric

 

 

体外受精の治療過程では、一般的には排卵誘発剤を使用して卵巣を刺激します。

これによって多くの成熟卵子が取れて受精の確率を上げ、多くの胚盤胞が培養できて移植して妊娠できる機会を増やします。


卵子在庫量の指標が良い方々が排卵誘発剤を使用しても反応が思わしくないことがあります。

排卵促進剤を使用しても理想的な卵子の数が採れない場合、我々はこれを卵巣反応不良(POR:poor ovarian response)と言います。

現在、世界ではこういった反応が思わしくないグループを分類するために、2011年にオーストラリア生殖医療学会(ESHRE)で定められたBologna criteria(表一)を参考にしています。

これに基づいて医師が治療計画を作成します。

(表1)Bologna criteria

 

Bologna criteria分類によって、体外受精治療の成果を予測でき、不妊症の患者様へのコンサルタントをする時の参考にはなりますが、

卵巣反応不良(POR:poor ovarian response)のグループの方々が完全にこの分類の定義に当てはまらないこともあります。

 

さらに、最も重要なのは、定義に含まれる個人差が広すぎて同じ治療計画を用いることに適さないことです。

この2つの理由から、生殖医療学会では医師がPORをより正確に治療できるように、より詳細な分類法を定める準備を徐々に進めています。

 

「POSEIDON分類法」も、このように期待されて生まれました。
「POSEIDON」(ギリシャ神話の海神「ポセイドン」と同じ)分類法(図一)は

Patient-Oriented Strategies Encompassing IndividualizeD Oocyte Numberの略で、患者中心という意義が含まれています。

 

2019年の生殖医療学会では、POSEIDON分類額の専門チームリーダーであるPeter Humaidan教授を台湾に招き、この分類法の基礎理論と卵巣反応が思わしくない場合の治療にどう用いるかを講演していただきました。


POSEIDON分類法は同時に卵子の「量」と「質」、卵子在庫量の指標(AMH、AFC)から卵子の量を評価します。

また、年齢から卵子の染色体異常率を評価、多方面の数値を参考にして正確に治療予後(PROGNOSIS)を予測します。

医師のオーダーメイド治療計画により、患者様に治療結果への更なる期待をお持ちいただけます。
 

 

(図1)POSEIDON分類法

 

 

 

POSEIDONの分類は、主に卵巣反応が思わしくない4つのグループに分けられます。

加齢に伴う染色体異常率とホルモン注射刺激の反応によって、個別的に治療計画を調整することができます。
 

例:
(1)異なるGnRHaを使用する
(2)ゴナドトロピンと、その受容体の多型性を検測する
(3)rFSHの開始用量を調整する
(4)治療過程に合わせて注射の容量または注射の組み合わせを調整する
  (例:rFSHの単独使用またはrLHを併せて使用)
(5)卵子収集法または胚盤胞収集法

Group1(卵子の在庫量が十分足りていて、卵子の品質が良い)では、rFSHの用量を増やすかrLHを併用することをお勧めします。

Group2(卵子の在庫量が十分足りていて、卵子の品質が良くない)に対しては、注射薬の調整以外に異なる排卵促進剤の用いるか、胚盤胞収集を勧めます。

Group3(卵子の在庫量が不足、卵子の品質は良い)では、長期治療(long GnRHa protocol)、二段階採卵による卵子収集法/胚盤胞収集法により出産率を上げることができます。

Group4(卵子の在庫量が不足、卵子の品質が良くない)は、Group3の方法以外に、考えを変えて卵子提供を受けることも検討のうちに入ります。

卵巣反応が思わしくないことは治療において、様々な困難を伴います。

優れた分類法を使用することで、医師が治療計画を考える際に正しい方向に導きます。

治療計画を誤る回数を減らし、医師と患者の双方が治療結果に対すして同じ認識を持つことができます。

 

POSEIDON分類法は、PORに属するグループのより詳細な分類ができ、この分類法の臨床的有効性を裏付けるために、ますます大規模な前向きな実験が行われることを楽しみにしています。

 

 

コメント

      李孟儒医師

 

 

1.皆個人差があるため、体外受精治療での排卵誘発剤での反応も変わってきます。
その中で卵巣反応が思わしくない(Poor ovarian response, POR)グループが最も難しいのです。

なぜなら採卵個数と妊娠率は比例し、通常約15個の成熟卵子があれば最も良い妊娠率に繋がるからです。

ですが、注射後の反応を完全に予測することができないため、排卵誘発剤の反応を予測するためにこの分類法が開発されました。

2.年齢、AMH、AFC、LH level、BMI、FSH or LH receptor polymorphism、

排卵誘発剤の種類と用量、排卵促進剤の選択、採卵者の技術など、多くの要因が採卵個数に影響します。

 

これらの複雑な要因は、人間の脳が計算できるレベルを超えている可能性があります。まして、私たちが知らない他の要因があるかもしれ ません。将来、私たちがもっと的確な方法を見出すために、人工知能の助けが必要になるかもしれません。
 

3.Ericの共有に感謝します。

そして、生殖医療の更なる発展の助けとなるために今後の研究に期待します。