本当に1.5倍でいいのか?──日本人が失った「所得2.3倍」の現実
◆ アメリカは成長していた。日本は止まっていた。
「日本の景気は回復基調です」「実質賃金が上がり始めました」──
最近、そんなニュースを聞くことも増えてきました。しかし、ここで立ち止まって、冷静に問い直してみましょう。
この23年間で、私たちの暮らしは本当に豊かになったでしょうか?
答えは、おそらく「No」です。
それもそのはずです。
🇺🇸 アメリカの名目GDPは2000年から2023年の間に約2.7倍
🇯🇵 日本は同じ期間で、たった約1.18倍しか増えていません。
この差は、とんでもなく大きな意味を持ちます。
仮に、日本もアメリカと同じように成長していたなら──
📈 2023年の日本のGDPは約1,355兆円になっていたはずです(実際は約591兆円)
💰 一人あたりの所得も、今の2.3倍程度にはなっていた計算になります。
つまり、今の年収が450万円の人なら、本来得られていたはずの年収は約1,035万円。
私たちはこの23年間で、「失われた2.3倍の未来」を抱え込んでしまったのです。
◆ 石破茂氏の「所得1.5倍」公約──それは希望か、それとも過去からの逃避か?
そして今、新たな政権構想として、石破茂氏がこう語っています。
「2040年までに国民の所得を1.5倍にしたい」
15年で1.5倍──たしかに聞こえは良い。
でも、ここで思い出してください。私たちはすでに2.3倍の所得を失っているのです。
1.5倍で、取り戻せるでしょうか?
1.5倍で、本当に満足できるでしょうか?
しかもこの「1.5倍」達成には、年平均で2.76%の名目成長が必要です。
アメリカはそれを現実に、20年以上続けてきました。(4%以上)
ならばこれは、「挑戦」ではなく、「最低限の取り戻し」ではないでしょうか?
◆ 賃上げは「お願い」では達成できない
最近、政府関係者がよく口にするフレーズがあります。
「企業に賃上げをお願いする」
しかし、それで本当に給料は上がるのでしょうか?
企業が儲かっていなければ、賃上げはできません。
中小企業が仕入れ価格や人件費を価格に転嫁できなければ、賃上げは続きません。
つまり、「お願い」ではダメなのです。
構造的に、賃上げが可能な経済を設計することが必要です。
◆ 所得倍増のために必要な“現実的”政策とは
私たちが本気で「所得倍増」を実現したいのであれば、
次のような成長と分配のセット戦略が不可欠です。
✅ 成長のために:
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公共投資の拡大(地方インフラ、防災、教育など)
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中小企業への設備投資補助・研究支援
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科学技術、再エネ、地域産業への積極的な国策投資
✅ 分配のために:
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消費税の廃止・減税(特に食料品など必需品)
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所得税の再構成と給付付き税額控除(低所得層の底上げ)
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最低賃金の段階的引き上げと、賃上げ支援金制度
✅ 財政運営の改革:
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積極的な国債発行によるマネー供給
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インフレ目標を維持しつつ、財政出動を継続
◆ 今こそ問いたい。政治は「過去を悔い、未来を設計する覚悟」があるのか?
日本人はすでに所得2.3倍の未来を失った。
だからこそ、これからの15年は「1.5倍」では足りない。
むしろ、2倍に向けた“リカバリー政策”が必要だと私は思います。
石破氏が本当に経済再建を志すならば、
お願いベースではない「本質的な改革と投資」が求められるでしょう。
そして私たち国民もまた、
「この30年、本当にこれでよかったのか?」
「次の15年は、誰に託すべきか?」
を、考えるタイミングに来ているのではないでしょうか。