ひと月あまり前

親戚の Ⅿ ちゃんに ラベンダーの苗をいただいた

彼女のお宅にお邪魔したのは 久しぶりのことだった

 

彼女の母親である S さんは 昨年から体調をこわしていた 

私が玄関のドアをあけると

S さんは玄関の途中まで出迎えてくれて 嬉しそうだった

けれども 少しの間お茶をして 話をした後は

疲れた様子で 寝室に戻っていった

その様子を見て

もう あまり会いに来ない方がいいかもしれないと

複雑な思いでドアの外に出た

 

玄関の脇に置いてあったいくつかの苗のうち

どれか持って帰っていいですよと M ちゃんに言われ

私は 少し花のついた ラベンダーを選んだ

 

帰り道 ラベンダーを手にして 

S さんには  もう二度と会えないかもしれないと思うと 

思わず 苗の入った袋を強く握りしめた

 

翌日すぐにホームセンターに出向き

植木鉢と花の土を購入した

いつも買う時は適当だった私なのに

その日は スタッフの方に 

ラベンダーにはどの土がいいのか 植木鉢の大きさは適当なのかなど

たくさん相談した

この花は どうしても ちゃんと育てたい…

熱い思いが こみ上げて来ていた

 

 

これまで S さんとは 様々な思いで過ごしてきた

もちろん楽しい思い出もたくさんあるけど

時には 負の感情を感じてしまうこともあった

 

けれども今 彼女との思い出の全てに できるだけの愛を込めて 

きれいなものとして浄化していきたいという思いが 

日ごとに  湧き上がってきていた

 

それでも今 私が彼女のためにできることは何もない

せめて このラベンダーに愛を注ぐことが 

間接的に彼女へ愛を送ることになると 信じ始めていた

 

その日から毎日 ガラス窓ごしに日が当たるように 場所を選び

  来てくれてありがとう 元気に育ってね

と折々に声をかけながら 水を注いだ

 

2週間ほど経っただろうか 

ふと見ると 新しい葉が伸び そこから小さな蕾が覗いて見えて

よく見ると 何と 可愛い蕾が3つ!

花だけ楽しめればいい くらいに思っていたので もう本当に嬉しかった

 

そうなると もう止まらない

日差しの向きによって 植木鉢の位置を変えながら

しばらくじっと 覗き込んでは 動くのを忘れていることもある

新しく生まれて来た 小さな蕾を見つけては 小躍りしてしまう

 

毎日 毎日 気づかないうちに蕾は大きくなっていく

そして今日 蕾の数は14個に…

一番大きな蕾からは 紫いろの小さな花が咲き始めた

 

S さん そしてお母さんを献身的に介護している M ちゃん

こんなに 蕾が増えましたよ きれいな花がたくさん咲きそうですよ

そんな思いを二人に伝えたいと思ったとたん 私の心の奥が揺れ始めた

 

S さんに たくさんの愛を送っていると思っていたのに

本当は…

この花のおかげで 私自身が癒されて 浄化されてきていたのだ

複雑な思いを きれいな思い出にするために

 

植物には 信じられないほどに大きな力があるのだと 改めて思った

 

 

S さんと M ちゃんに この愛が届きますように

私は ラベンダーの蕾に向かって 祈っていた