1952年のワルシャワを舞台にしたブラックコメディー。
今企画で2回しか上映されないので、ネタバレ。
30歳の未婚の娘とその母と祖母の三人暮らし。
当時のソビエト支配、共産党独裁体制が描かれて面白い。
ワルシャワ蜂起やパルチザンという言葉が出てくる。
ワルシャワ蜂起を生き延びた人々ということになる。
金の供出の命令が政府から出る。
その家には1881年libertyと記された金貨が1枚ある。娘はそれをなんとか隠そうとする。家宅捜索もされ、その上見つかったらえらい目にあうので、最も安全な隠し場所として体内を選ぶ。
つまり飲み込んで、排出し、キレイに洗ってまた飲み込むということを繰り返す。
そこで起こる笑いは警察国家への笑いだろう。
娘は出版局に勤めていて、詩集の編集をしている。
退屈な農民詩人のものなら出せるが、気に入っている詩人ヴォジェツキの詩はところどころを直さないと出せないと言う。
局長は俗人でマルクスの肖像が背後にあるデスクで愛人と性行為をしたりする。
彼女は家人から結婚することをせがまれているが、母親がつれてくる男はろくなものがいない。
ある夜、帰宅するとき二人の男にカバンを奪われそうになる。
そこにハンフリー・ボガードのようなヒーローが登場し、暴漢を撃退してくれる。
そしてその男の手練手管が始り恋に落ちる。
その手練手管のひとつひとつがおかしい。
その男を家に招いたときに強引に肉体関係を迫られ関係を持ってしまう。
すると男は結婚しようと言い出し、君に詩を書いて欲しいと言う。
娘がどんな詩を?と言うと、局長の人間関係や愛人関係を書いてくれという。
「公安なの!」
と言って娘は男を毒殺する。
娘と母親で遺体処理をしようと酸で溶かすものの、遺骨の処置に困る。
するとそれを察知した祖母が、自分が死んだときに棺おけに入れればいいと提案する。
公安との行為で妊娠し、スターリン死去の報で大喜びすると産気づいてしまう。
息子は大きくなりニューヨークに住んでいて、ゲイの恋人とワルシャワを訪れ娘の母の墓参をする。
息子の父親は革命に殉じ行方不明になった英雄ということになっている。
娘ひとりで革命英雄顕彰碑に行く。
ポーランドが民主化してわずか25年である。
密やかな笑いをもたらすブラックコメディーだが、警察国家、密告社会、一党独裁国家の土壌があってはじめて描ける特異な「笑い」である。
尚、2009年アカデミー賞外国語映画賞ポーランド代表作品。
原題 REWERS
監督 ボリス・ランコシュ
2009年ポーランド映画
当映画祭は渋谷シアターイメージフォーラムにて12月26日まで
