イスラム国(IS)が示すもの
9・11の直後に辺見庸氏の講演を聴いた。
本当の直後だったため予定されていた講演内容は9・11とは無関係だったが、彼はその中で実行犯についてこう述べた。
「彼らが自らの命をかけたことに思いを馳せたい」
命をかけるほどの憎悪について言いたかったと思うし、それほどの憎悪の対象となる合州国のことも言いたかったのではないかと思った。
暴力を否定することは簡単だ。
しかしこの暴力の根源を問うことは重要だ。
イスラム国が合州国のジャーナリストを公開処刑したことは大きな衝撃として伝わった。
バイデン副大統領は指を立てて「地獄に突き落とす」と発言したし、オバマ大統領も空爆に踏み切った。
合州国はジャーナリスト殺害が合州国への攻撃とみなし個別的自衛権を行使しシリア空爆を企図している。
合州国は戦費問題から中東の戦闘から手を引こうとし、日本などに集団的自衛権の解釈変更を求め戦闘の肩代わりを求めてきた。
しかし、イスラム国によって自ら始めた戦争から抜けられないのだ。
9・11以後、合州国はアフガニスタンやイラクに対し一方的に戦争を仕掛け、10万人を遥かに超える殺人を犯した。
そして無実のフセインを死刑(死刑判決を出したのは合州国ではないが)にし、ビンラディンを暗殺した。
これらの絶望的な状況から絶望的な組織が立ち上がったのがイスラム国だろう。
彼らに敗北はない。
全滅か合州国の撤退かしかない。
誰もがヴェトナムを連想するだろう。
フセインの逮捕や、ビンラディンの暗殺に歓喜した人々は、ジャーナリストの処刑に激怒している。
私には逮捕・暗殺と処刑が同じように見える。
今、合州国は対イスラム国への有志連合を構築しつつある。
集団的自衛権の根拠付けと戦費の分散が狙いだが、トルコが合州国の基地使用を拒否した。先に、トルコはイスラム国に対する外国人兵士や資金供給根絶合意の共同文書への署名も拒否した。
トルコの懸念は人質問題などのイスラム国からの報復だが、「正義の行方」もあるのではないだろうか?
世界各国からイスラム国に参加する者が増えている。
その理由として経済的待遇やネット戦略の巧みさを主張するメディアがある。
しかしそこには実は「正義の行方」への関心があるのではないだろうか?
中東は植民地主義で疲弊し、名ばかりの独立の後欧米は独裁者を支持し支援した。
アラブの春は「その後」を見たのだと思う。
ヨーロッパの対応も対合州国問題として悩ましい。
ドイツは武器供与に踏み切ったが、空爆に参加しないことを明言している。
フランスは積極姿勢を見せている。
国連の動きが注目される。
暴力がないことがいいのはあたりまえだ。
暴力を否定することも間違っていない。
しかし否定するなら合州国の引き起こしたアフガニスタン戦争、イラク戦争、フセイン逮捕、ビンラディン暗殺もすべて否定しなければならない。
また、イラクに大量破壊兵器があったことを確信している自由民主党(あるいは小泉個人?)はその判断を訂正しなくていいのかと思う。それが合州国の唯一の攻撃の根拠だったのだから…