モツ風情
かつてモツという食物は辺境の食べ物だった。
だからおいしいモツ焼や煮込みを探す楽しみがあった。
仕入れと手の掛け方でどんなものにも変わる可能性があったからだ。
無論、おいしくないものも山ほどあった。
おいしくないものに共通するのは、店側の諦念感だ。
所詮安い物だからという卑下した態度だ。
安い物をおいしくさせる工夫は「チューハイ」に通底する。
かつて東京にはおいしい焼酎がなかったため、それをいかにうまく呑ませるかという工夫から生まれたのが「チューハイ」つまり「ショーチューハイボール」だ。
私の父母の世代は焼酎を労働者の飲み物と言い呑まなかった世代だ。
ところが気がつけばモツブームである。
BSEがきっかけという人もいるが、私はそれ以前から始まっていたという認識がある。
昨今思うのは、どの店も美味しいのだ。
どの店も美味しくなっては面白さが無くなってしまう。
江東一や百尺などの名店が消えた後にブームが来たと思う。
そのブームの中でも、三裕酒場や大黒屋などは消えて行った。
逆に洗練されない味が懐かしくなる。
身勝手なものだ。

