スパイク・リーの『セントアンナの奇跡』を偶然観た。
舞台は1944年のトスカーナで、英語、ドイツ語、イタリア語(トスカーナ方言かどうかはわからない)が氾濫する語学マニアにはたまらない作品。
トスカーナの最前線でアメリカ軍とドイツ軍が対峙しているが、そこへドイツ軍の放送車がやってきて音声を流す。
ベルリンからのなまめかしい女性の声だ。
アメリカ軍はこの女性を「アクシスサリー」と呼んでいる。その声はこう言う。
「私たちは黒人(映画のスーパーの表現。原語ではニグロ)を敵だと思っていません」
「周りを見て下さい。白人がいますか?」(アフリカ系の兵士が回りを見る、白人はいない)
「あなたたちは戦って帰国しても選挙権すらありません」(公民権運動は60年以降)
「アメリカが勝ったら奴隷制国家が残るだけ」
プロパガンダではなく、事実の列挙だ。
アフリカ系兵士のひとりはこう言う。
「これはヤツら(白人)の戦争だ」
トスカーナの小さな村に入り、ダンスパーティーに誘われ、一緒に食べたり踊ったりする。
「イタリア人は、人種差別を知らないのか?」とひとりの兵士が言う。
ルイジアナ州でのエピソードが入る。
アフリカ系兵士たちが、カキ氷を食べようとパーラーに入る。MPとドイツ人捕虜が入っていて、カキ氷を食べている。すると店主がピストルを手にし、「裏口へ回れ」と言う。
アフリカ系兵士はこう言う。
「ナチは客で、オレたちはブタか」
映画全体はよくできたファンタジーだ。
ムッソリーニ失脚の後のイタリアは、ドイツに宣戦布告したため、住民は大変苦労し虐殺が各地で起きた。そのエピソードのひとつである。