この街道ぞいにあるらしいというのがせめてものすくいであった。
連峰につならる山々をみながら幾つもの山あいの渓谷にはいり、カーブをまわり下っていくと、いつとなくあたりは広大な山ふところを観せ、やはり看板はないのかと、思った時、その看板は栗林の下にぽつりとあったのである。私たちがついたころは、せみの声もまっさかりで夏の気配を山道のふちに茂る木々の濃厚な緑色で感じるのです。
そのような緑の中に白地で赤く「まむしごはん」と書かれてあったのです。
「あったー、ええー、うそー」と言いながらたまちゃんは、白地で赤く書かれた看板の前に、車を寄せて止めた。
ガラスの引き戸を開けて入ると安っぽいテーブル
が二つ、横は畳でやはりテーブルが二つありどことなく和風ラーメン屋さんといった感じです。
調理場はカウンターに仕切りがなく丸見えで中に変なおっさんが一人新聞を読んでいてちらっとこちらを見て驚いたように「いらっしゃい」といい読んでいた新聞を折りたたんだ。
「まっ!いいか!」と三人めくばせをし奥の椅子にかけお店の中を見わたしたのでした。
さて、何を注文するか三人とも椅子につくなりメニュウを恐る恐るとり見てみるとうどん、山菜釜飯、やきそば、ラーメンと書いてあり一番下にまむしご飯と書いてありました。
さすがに、ヘビ料理だけではお客が一人もこないとだめなので、一番下にまむしご飯とだけ書いてありました。
結局、みんな怖いごころで注文したくないのが本心だったのですがヤフー好きの、やふー子は「私生きたままだったら飲み込んでしまうのだけどー」と言うのです。
そして、「まるちゃん、まむしご飯注文したら?」と言うのです。
この女は、いつもそうです。
ヤフー好きの、やふー子と私は同じ会社で仕事をしていました。私のお気に入りの長山君のそばに行き、「ねえ、これどういうこと」とわかっていることも、長山君の肩に手を置き聞きながらあからさまに「私の彼」と見せつけるのでした。
「ほほおー、それじゃ先にやって見せてよ」と言うとヤフー好きの、やふー子は笑ってごまかしました。三人ともむしご飯を注文するのは、抵抗があるので私とたまちゃんが山菜釜飯、ヤフー好きの、やふー子はラーメンになり、まむしご飯はみんなで一品、注文することになりました。
待っている間も、ヤフー好きのやふー子は自分の恋愛話をしました。
いかにも私は、男の扱いを知っているかのように話すのです。
それならついでに、犬の扱いとソリの操作方法を覚えなさい。私があなたを、いぬぞりに乗せてあげるから北極でも南極でも行けばいいじゃんと思っていました。
つづく
おやしらず