川端康成作「伊豆の踊り子」は二回読み通した。が、「雪国」は二度挑戦していずれも序盤で挫折した。この二作には(後者が序盤のみの情報でも推測できる)対照的な特徴があった。
前者は具体的な地名が普通に(そもそもタイトルに)出てくる。一方、後者は温泉街の地名が明示されていない。「島村」の居所は東京だが。
ここまでは以前書いた覚えがある。で、全編にわたって本当に「雪国」は温泉街の地名の記述がないのか確認したいとずっと思っていた。
最近、意図的に長距離フェリーを選んで乗ってるが航路によってはネット環境が隔絶されるタイミングがある。デジタルデトックスよろしく読書にはうってつけである。というわけで図書館で借りてきた。
実際に読み始めるとこれまでの挫折同様に細かいことに気を取られて進まないうえに疲れてくる。そもそも私は小説を読むのが苦手だ。
そこで、情景や心情、風土や風俗の記述をすっ飛ばして読んでみた。この作品の味わいを拒否したことになるが、まあしょうがない。
時々、過去に移動するキーワードまで読み飛ばして時空をさまよった。あと、嚙み合わない会話はどっちのセリフか台本みたいに書いてほしい。
ともあれ、なんとか最後まで読めた。
読みながらメモをとってみた。ななめ読みゆえ精度は怪しいが、大いにネタバレなので注意されたい。
- 駒子も過去に東京で暮らしてたことがある。
- 地名は「浜松」も出てくる。東京と合わせて地名はこの2つだけだと思う。
- 「駒子」は芸名である。島村が本名を知ってたかはともかく読者には最後まで知らされない。
- 葉子と弟は名前が出てくる。
- 島村は「酒を飲まない」ことを盲目の按摩に言い当てられた。
- 島村は映像作品では二枚目が演じるので、実はぽっちゃり中年の設定だと知って驚いた。
- 島村には親譲りの財産があるが、いちおう文筆家をしている。妻子がいるので明らかに不倫ものである。
- この時代(作品発表期間:昭和9年〜12年)の学生は経済的に裕福なので普通に温泉芸者を上げる。
- 温泉町の鉄道の描写が時々出てくる。
- 岩波文庫版のあとがきで 川端自身が不統一・ 不調和があると述べている。
上記の第8項は、「芸者仲間で温泉街の地元のスキー場へ行くときは白粉なしのすっぴんで浅黒いが、一応昨夜の客の学生には気づかれるので要注意」というエピソードから。
ここで、「伊豆の踊り子」との類似に気づいた。主人公の学生は一高生(現在の東大)だがそもそも高等教育など金持ちだけのものだった。ただ、彼は孤児で親戚に厄介になっている。
そして、ヒロインは旅芸人一座の踊り子である。学生は彼女を「その気になれば買える」身分だった。そうならかったけど。
つまり2作品とも、「経済的には他力により不自由ない身分だがコンプレックスを抱える男」と「格差社会で芸以外も売って自力で懸命に素直に生きる女」の刹那的な心のふれあいである。そして当然のように結ばれない。
結局、船の中で数時間読んだだけで図書館の返却日まではまだ数日がある。が、読み返す気にならないし、この記事も書けたし返してしまおう。
なお、川端作品はまだ著作権が保持されているので青空文庫にはない。