67冊目。

広告放浪記 浅暮三文 ポプラ社

「スキルやとか、モチベーションやとか、そんなんあらへんかったで、あの頃。」
という、秀逸な帯のコピーを見てジャケ買い。

1980年代前半、バブル前の大阪の広告業界を小さな代理店新入社員の視線で描く著者の自伝的な小説。
新聞系代理店で案内広告の飛び込み営業を繰り返す主人公の、おかしくも哀しい「野良犬」のような日々。
大阪駅前第3ビルのトイレで眠る、大阪環状線を入場券だけを手に何周もぐるぐるまわる、大毎地下劇場の2本立ての安映画を見る。
いわゆるダメ営業社員の生態が生々しく、本書の舞台である堂島界隈で働いた経験がある僕には懐かしい描写が随所に。
確かに、あの頃に仕事で接した堂島界隈の広告屋のおじさんたちは、とても他の業界では働けないだろうという風貌とおおらかさ(というか適当さ)と厳しさに満ちていた。

広告の世界も、勿論インターネット以前の「効果測定」なんてものが言葉以上の意味を持たなかった時代。広告を100%文系人種が牛耳っていた牧歌的だけれど甘ったるく危うくロマンティックだった時代。

単純におもしろかった一冊。

広告放浪記/浅暮 三文

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