「教皇選挙」この邦題のセンスのなさ。「選挙」って言うのはどうしても政治性が強くなる。「コンクラーベ」でいいと思います。この言葉かなり浸透してきてますよ。教皇...ようするに最大宗派キリスト教のトップの選出です。日本のジャリタレ集めて「〇〇〇総選挙」なんてのが一時期はやりましたが、そんなのに乗っかったかどうかは知れませんがもったいないですわ、非常によう出来た作品だけにね。最後のオチは別やけど。このコンクラーベを取り仕切り、出るわ出るわの不正にスキャンダル、頭を悩ます首席枢機卿にレイフ・ファインズ、候補にスタンリー・トゥチ、ジョン・リスゴーとハリウッドを支える曲者俳優たちが揃い、加えて大きなキーポイントとなる修道女の責任者にイザベラ・ロッセリーニ、言わずと知れた大女優イングリット・バーグマンの娘、母の血は争えず綺麗な人やったんやけどねぇ、彼女ももう73ですか、女性に年齢の話は失礼ですがレジェンドの二世がこの年だと聞くと時代は回る、でも映画は残る...いやぁ深いねぇ。
ローマ教皇が急逝した。それに伴いイギリスの首席枢機卿トマス・ローレンスがバチカンに到着。悲しむ間もなく、新たな教皇を決定するコンクラーベを取り仕切ると言う重責を担うこととなる。ローレンスに野心はなく長年の親友であるアメリカのリベラル派、ベリーニを推すつもりでいた。他の有力者には保守派であるカナダのトランブレ枢機卿、それよりも尚、強硬派でありイスラムとの宗教戦争だと訴えるイタリアのテデスコ枢機卿らがいた。続々とバチカンへ終結する枢機卿たち100名余の中に生前の教皇より最後に枢機卿に認定されたベニテス枢機卿の姿もあった。彼はメキシコ出身で戦乱の渦巻くアフガニスタンからやってきた。そしてローレンスを非常に尊敬していると言う。いろんな波乱を含みながらコンクラーベが始まる。コンクラーベの期間中は外部との接触は一切禁じられ、枢機卿たちの議場となるシスティーナ礼拝堂は議事の最中は監禁状態となり、宿泊施設となる「聖マルタの家」との往来だけが唯一の外出機械。「聖マルタの家」を取り仕切るのは運営の責任者であるシスター・アグネスである。
第一日目、大方の予想に反してトップに躍り出たのはナイジェリアのアデイエミ枢機卿だった。必要投票数には達してなかったが意外な展開だった。そしてローレンスにも少なからず票が入っていた。最有力だったベリーニは3位。ベリーニはローレンスに不信感を持ち、教皇の座を狙っているのではと詰め寄る。ローレンスに入れたのはベニデスとその周辺であることは明らかだった。第二日目、やはりトップはアデイエミ。今回も必要投票数に達しなかったもののアフリカ系初の教皇誕生か、と言う雰囲気が流れ始めたが、思わぬ事が発覚する。30年前に犯した性的スキャンダルが明るみに出たのである。これによってアデイエミは脱落。ローレンスは側近に候補者たちの身辺を探らせるのだが、皆それぞれに疑惑を抱えている。次の投票ではトランブレが最多得票数を取る。だが、彼がアデイエミのスキャンダルを流したことがわかり、シスター・アグネスにより彼の不正が告発される。コンクラーベは混迷を極め思わぬ結末を迎えることになるのだが...。
まあ、観ていると政治家の選挙より生々しい。こちらの世界にも保守、リベラル、多宗派(特にイスラム教)との一戦をも交えようとする強硬派、共に認めあおうとする穏健派が存在し、やっぱりあるんかなぁ、陰謀、画策、不正等。
しかしこれを観て清廉潔白で神の僕と自負するバチカンは何も言わんのでしょうか?アカデミー賞の候補にも挙がったこの作品。お坊様たちは知らんとは思わんのだが...それはそれで作品自体は非常にスリリングでまさに「密室」での出来事として描かれるサスペンス作品となっています。調べてみると「コンクラーベ」と言うのはラテン語で「監禁」とか「密室」とかって意味があるらしい。まさに「言いえて妙」であります。
レイフ・ファインズ演じる主席枢機卿の役どころは「神聖なるシャーロック・ホームズ」と言ったところ。けど神に対してと言うよりバチカンに対して信仰が揺らいでいてやや不安定なところがある。全部を肯定しきれない。そこがなんかいいですね。お坊様たちの中にも多宗派も認めるべき、いや奴らは悪魔だ、戦争だと、坊様のくせに宣うものもいる。実に生々しい。まあ、いろんな情報から紐解くと神父様や牧師様、枢機卿ともなるといろんなしがらみも出てくるし、欲も出てくる(煩悩ってやつね)。前に観たエクソシスト系の作品でも、エクソシストを認める教皇、認めない教皇もいたとのこと。神様に使える人は大変です。非常にシンプルに楽しめた映画ですが、ラストの「オチ」、ええっ~、そこに持っていく?何々、結局ここでもこの話なのと言うような結末。
これからご覧になる人もいるやろうからこれ以上は言わんけど、あっちもトランスジェンダー、こっちもトランスジェンダーもうええやろうって感じです。けど映画としては出演してるのが芸達者ばっかやし、非常にできた作品だと思います。