ザ・ルーム・ネクスト・ドア | kazuのブログ

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サラリーマン社長のムービートラベル

「友情」と言うのは男の専売特許や!なんて野暮なことは言いません。けど女性の友情を描いた映画って言われるとなかなか出てきません。シャーリー・マクレーンとアン・バンクロフト共演の「愛と喝采の日々」、スーザン・サランドンとジーナ・デイビス共演の「テルマ&ルイーズ」、ジャクリーン・ビセットとキャンディス・バーゲン共演の「ベストフレンズ」...知れたところじゃこのあたりかなぁ。そうそう、自分がまだ高校生やったと思う。全く対照的な少女二人の出会いと友情を描いた「タイムズ・スクエア」って作品がありました。当時は全く注目されなかった作品やけど、何と言うか少女二人の瑞々しさ、清々しさが際立った作品でした。興味ある方はNetflixとかAmazom Primeとかでどうぞ。

さて今回はそんな女同士の友情と「死を見つめる」と言う女性二人の心の葛藤を描いた作品、「ザ・ルーム・ネクスト・ドア」。主演は当代きっての演技派女優二人、ティルダ・スウィントンとジュリアン・ムーア。やっぱり上手なお二人です。なんかほぼ二人芝居のような気がしました。余命僅かな元従軍記者の女性マーサと売れっ子小説家のイングリット。疎遠になっていた二人でしたがマーサの病気をきっかけに今までの空白を埋めるように二人は病室で語らいます。そしてマーサが言います。「その時」が来るまで二人で過ごしてほしい...。あなたならどうします?俺は絶対無理...。

売れっ子小説家イングリットはかつて同じ職場にいたマーサが末期癌だと知る。イングリットは小説家の道を、マーサは従軍記者として世界の紛争地域を駆け回っていた。親友同士だった二人はお互い別々の道へ向かい、今ではすっかり疎遠になっていた。だがマーサの病を機に二人は病院で、マーサの自宅で語らいあうようになった。

ある日、マーサがイングリットに「『その時』が来るまで二人で過ごしてほしい。」と頼みこむ。マーサは治療を阻み安楽死を望んでた。彼女は苦痛に耐えられなくなった場合のために違法薬物まで購入している。後々、面倒なことになるのは日を見るより明らかだ。だがイングリットは悩んだ末、マーサの依頼を引き受けることにした。二人はマーサが借りた郊外の森の中の一軒家でわずかな日々を過ごすことにした。マーサは上の階の部屋に、イングリットは下の階の部屋に。マーサが言った。

「部屋のドアを開けて寝るけれど、ドアが閉まっていたら私はもうこの世にいないと思って」

こうして二人の短い数日間が始まった。

 

マーサを演じたティルダ・スウィントンはどちらかと言えば高身長で中性的。氷のような悪女もやるしどこかつかみどころのない役の多い、ホンマの曲者女優。方やイングリットを演じたジュリアン・ムーアは典型的な中年美女の叩き上げの演技派女優。二人の表情、セリフの一つ一つがこの作品そのものです。

二人の友情と共に「死」と言うものに対して向き合う二人の女優の姿があります。マーサは目前に迫った「死」に対して自らはどう対処すればよいのかどうやって美しく「それ」を迎え入れることができるのか。このあたりは女性独特の感覚やろなあ。一見、狂気じみてはいるけれど誰よりも冷静です。方や見守るイングリットの方が動揺します。死にゆく友人を目の前にして間違ってドアが閉まっていると気が動転し、嘔吐までする。今まで考えなかった「死」を見つめる、考えると言うのは突然降って涌いてきたような出来事。彼女にとってはマーサよりも酷だったのかもしれません。

まあ、こんなじっくりと女優さんたちの演技を見せるような作品は近年稀になってきました。ともすれば撮影技術に頼り、派手な演出をしがちな映画界。久しぶりに落ち着いて「映画を観れた」ような気がします。