子どもの頃から、そう、物心がついた頃から時々見る夢があった。
たたきのある広い玄関から廊下を通って行くと、まず1つ目の大きなキッチンにたどり着く。
食器棚やシンク、ガス台の他に、テーブルがあり、お勝手口がある。
そして、その続き間には広間があり、その奥にいくつかの部屋が続く。
脱衣場があり、洗濯機が置いてある。風呂場は階段を下って行くと大きく男湯と女湯に別れている。
まるで旅館みたいに広い造りの家で、他にも第2キッチンがある。
行っても行っても終わりがない回廊のような廊下が続く。いろんな部屋を通り抜けて行く私。
どの部屋にも人がワイワイと賑やかに暮らしている。家族なのか、同居人なのか?
洋室もある。
和室もある。
でも、いつまで歩いても私の部屋にはたどり着かないのだ。
螺旋階段を上ったり下がったりする。
私はどこに迷い込んでしまったのだろうかと途中から不安になりながらも、落ち着くべき自分の部屋を求めてグルグル動く。
ここでもない、ここでもないとさ迷う。
不安で不安で仕方ない。
目が覚めるといつも心がザワザワしていて、夢見が悪かった。
そして、自分の部屋に居て、いつものベッドで目覚めたことに安堵した。
自分の家の中で、迷子になってさ迷う夢。
あの夢を見ることは無くなったけれど、不思議と夢の内容は鮮明に覚えている。
なんだか、昔よく見た夢を思い出してしまったわ。
茶色いノスタルジックな夢。
さあ、もうすぐ夜が明ける。
新しい1日の始まりだ。