幼い時分、夏の夕暮時に父が近所のスーパーに連れて行ってくれて、カードダスをやらせてくれたことがある。


お金を20円いれて、ダイヤルを回すとカードが一枚出てくる。


出てきたカードに何が描かれていたかは忘れてしまったけれど、その時の胸の鼓動も覚えている。

ダイヤルを回す感触や音もよく覚えている。


だから何だという話ではあるけれど、自分にはこの記憶は大切な記憶である。

誰しも美しい個人的な歴史があるだろう。


この個人的な歴史を無遠慮な手で破壊することが、戦争なんだろうな。

戦争は嫌だ。あんまりにも無遠慮だよ。


運動会の前日にドキドキしたことや、叱られて、悲しかった時に見た指の先や、朝の布団が気持ち良くていつまでも起きられないその体温や、そういったものが、破壊されるんだから、どうしても、嫌だ。